ちば環境情報センター
2004.6.7 発行    ニュースレター第83号
代表:小西由希子

目次

  1. 三番瀬でアマモ場再生に向けた実験をスタートしました
  2. ランの花が「空飛ぶアヒル」になったわけ
  3. 里山シンポジウムに参加して 
  4. 地球にありがとう、みんなにありがとう
  5. アースディ千葉に参加して 

三番瀬でアマモ場再生に向けた実験をスタートしました

特定非営利活動法人 三番瀬環境市民センター 市川市 町田 恵美子 

 昨年の3月から三番瀬でアマモの実証実験を行っています。かつての三番瀬には「モク」などと呼ばれる海草の群落がたくさんあり、豊かな海を形作る重要な要素となっていたことがわかっています。しかし、埋め立てによる地形の変化や、漁業との競合などにより、アマモはほとんど見られなくなってしまいました。
 アマモは日の光が届く浅い海の砂泥底に成育する植物です。ニラのような細長い葉っぱが特徴です。海底に根を張り、水の汚れの原因となるリン・チッ素を栄養分として吸収します。また、光合成をするので二酸化炭素を吸収して海中に酸素を放出します。アマモの群落の中は、生物にとって安全な隠れ家です。いろいろな生き物が生息場所としたり、産卵の場として利用し、生物多様性にも大きく寄与することが知られています。
 私たちは16年ほど前からアマモ場を再生することで、さらに三番瀬を豊かな海にできると提案し続けてきました。ただ、当時は移植の技術も確立されていなかったし、自然再生という考え方も一般的ではなく、長い間実現できませんでした。しかし、昨年、地元行政や漁協の協力が得られ、やっと実験にこぎつけることができたのです。

みんなで三番瀬にアマモを移植(2003.3.22) 1600株に増えたアマモ(2004.4.5)

 まず、天然のアマモ場がある富津から栄養株を分けてもらい、行徳側2カ所(各50株)と船橋側1カ所(200株)に合わせて300株を移植しました。その後、月2回のモニタリングを続けて、成長を見守ってきました。移植後すぐに強い南風が吹いた影響で多少株が流出しましたが、夏まで順調に株数を増やし、三番瀬でもアマモが成長することが確認できました。秋になって船橋側のアマモは消滅してしまい、行徳側も一時減少しましたが、冬の水温低下とともにまた成長をはじめ、4月5日の段階で約1,600株まで増えたのを確認しています。一方、富津で種をつける枝(花枝)を採取して、種を取るという試みもやりました。約15,000粒の種が取れ、海域にまいて発芽することを確認しました。今後、大規模にアマモ場を造成するというような場合には、株の供給をアマモの自生地に頼らず、自前でまかなうこともできそうです。
今回は小規模な実験に過ぎませんが、この1年間でいろいろなことがわかりました。そして、三番瀬でもアマモ場造成の可能性が見えてきたと、自信を持って言えます。ところが、4月下旬のモニタリングで、1,600株あったアマモがすべて消滅しているのを発見しました。いろいろな状況から考えるに、恐らく人のインパクトが原因だろうと推測しています。1年間見守ってきたアマモがなくなってしまったのですから、もちろん残念でなりませんが、アマモ場の重要性や自然修復の意味を広く伝えるようなこともしていかないと、せっかく再生したアマモ場を保全することは難しいのだと、アマモたちが教えてくれたように思います。この結果を前向きに受け止めて、今後もアマモの実験を続けていきます。応援してください。


ランの花が「空飛ぶアヒル」になったわけ

千葉市稲毛区 大倉 よし子 

 「空飛ぶアヒル」を初めとして、ロバに、クモに、蚊、蚋、蜻蛉...オーストラリア南部に咲くランの花には、こういった名前を持ったものが多いのです。ランの花に興味を持ったのは、ビクトリア州の西にあるグランピオンズ国立公園に行ってからです。もともと、樹木は好きで、ユーカリやグルベリア、ハケアといった樹木には関心を持っていました。グランピオンズでは、サンデューと呼ばれるモウセンゴケの種類やユリ科の植物など、地学的なおもしろさのほかに、草木の種類が多いことも予備知識としてあり、かなり期待して出掛けました。そこで見かけた野生ランは、グロソディア・メージャーとか、ピンクフェアリー、ピンクフィンガーという、見た目いかにもランらしい、青やピンクの可憐な花たちでした。

動物や虫の名前を持ったランに出会ったのは、南豪州アデレードに移り、そこで仲間作りのために加入した自然保護団体の「ウォーク・ウィズ・ネイチャー(自然と歩く)」というブッシュウォークに参加してからです。これは早春から初夏にかけてのイベントで、午前中に指定された自然公園の集合場所に行くと、15人ぐらい集まったところでグループにし、リーダーをつけて公園内を歩いて自然を観察するというものです。私も、2年ほどしてリーダーに立候補し、何回かグループを引率しましたが、どうも、私はラン探しに夢中になりすぎてグループの人たちのペースにあわず、終わってみると2、3人しか一緒にいないということがほとんどでした。(それでも、感謝状をもらった!?)
はじめのころよく目にしたのは、ドンキー(ロバ)・オーキッド(ラン)で、Diuris ××というのですが、ロバの耳のように大きな萼があり、黄色に赤茶系のアクセントが主な色調のかわいいランです。花の形はあまり大きな差がありませんが、色の変化が多く、交配種もよくできるようで、その「××」の部分が同定できないことがよくありました。ほとんど黄色だったり、ピンクのものもあります。
種類も花の形も豊富なのはCaladenia種で、だいたいは、スパイダー(クモ)・オーキッドと呼ばれています。長いひょろひょろと広がる萼がクモの足のようだからでしょう。アデレード周辺では緑色に赤っぽいアクセントがあり、小さい花(3〜4cm)が多いのですが、西オーストラリアのスターリングレンジでは、大振りで(5〜7cm)純白のものもありました。
この種類のお気に入りは、ヘアー(ウサギ)・オーキッド (Caladenia menzies) で、花は1cmほどの小さなものです。ヒュンと長いウサギの耳のような萼が特徴です。群れで咲いているところは、まさに、マイクロウサギの集団で、初めてそんな群落を見たときは思わず吹き出してしまいました。
いろいろな公園を巡るうち、こんどはどんなランに会えるのかが楽しみとなり、半面、これまで数回見てきたものは、「あ、またか」と、興味が薄れる始末。長年オーストラリアに住み、やはりランにはまっている友人より先に彼女の探していた「シバの女王」というランを見つけたときは、恨まれました。でも、一度、西オーストラリアの片田舎のラン展示会で見た「空飛ぶアヒル」(かわいいので、あえて「アヒル」と呼ばせてもらいます)、英名"flying ducks" (Caleana major) は極め付けです。本当にカモが空を飛んでいる姿そのもの! 自然環境に自生しているものを一度は見てみたいものだと思っていましたが、叶いませんでした。
最近、それまではただ「すごいなあ」と感心していたそれらのランの花の形について、「どうして?」と思う気持ちが強くなりました。花や木の枝や葉に擬態する昆虫や、さまざまな海の生物をまねるタコがいますね。理屈は、天敵の目をくらます目的だろうということです。植物の中にも、動物に受粉を託すためにあの手この手を使う種類があります。ハチドリに蜜を吸わせその代わり、花粉を遠くに運んでもらうために、ハチドリの吸いやすいような花の形を作ったり、昆虫が触れると花の一部が一瞬のうちにその昆虫を捉え、背中にべったり花粉をつけるとか。じつは、「空飛ぶアヒル」も、そういった、トリガー(引きがね)プラントと呼ばれる種類です。ある種の昆虫を引き寄せる臭いがあるのではないかと言われています。実証はされていないそ
うですが、その臭いに誘われて来た昆虫に受粉を手助けしてもらうようです。

その機能そのものは、「なるほど!」と納得するのですが、それにしても、なぜ「アヒル」なのか? というのも、草丈は10cmほどで、花の大きさはほんの指の先ほどなのです。ちなみに、色は赤茶色です。そんな小さな花にアヒルやカモが寄ってくるはずもないし(せいぜい、踏み倒されるのが落ち)、デコイじゃあるまいし、仲間が欲しくてそんな形になったとも思えない。
では、なぜなんだろう。単に、機能だけを追及して、偶然その形になったというだけのことなんだろうか。私がたどり着いた答えは、きっと、植物はどうにかして、世界を視覚で捉える能力を身に付けているのではないか、ということ。「空飛ぶアヒル」ランは、自由に青空を行き来するカモ類の姿を見て、「ああ、あんなふうに遠くに、自由に飛んでいけたら、地球上いっぱいに仲間を増やせるのになあ」と感じ入ったのではないでしょうか。そう、アヒルランたちはとても稀な種類なんです。そんなふうに考えると、なんだか、切ない気分になります。まあ、根がロマンチストだからこんなことを思いつくのかもしれませんけど。なわけないじゃん!と、爆笑しているあなた、人をまねた花ってみたことありますか? 植物たちは、人間のまねはしたくないんじゃないかなあ。


里山シンポジウムに参加して 

市原市 南川 忠男 

 5月15日、かずさアカデミアパークで行われた「第1回里山シンポジウム」に参加しました。
内房線五井より南へ行くことが少ないので、木更津までの車窓からの眺めが目新しく、田植えの終わった一面の水田が広々としており、かずさアカデミアパークまでの20分間のバスからは水田との境に里山が新緑を輝かしておりました。「政策と里山」分科会に参加しました。受付では「生物・ビオトープ」が賑わっており、「里山と芸術」が家族連れの方の割合が多く、この「政策と里山」は名前が堅いので、たくさんのお客様がこられるか心配しましたが、分科会の会場は一杯となりました。

小西由希子代表も参加した堂本暁子知事とのパネルディスカッション 里山と生物・ビオトープ分科会

機械は持っていないが、農家の方の協力・指導の下お米を作ってみたい方、あるいは田んぼで農業の体験をしてみたい方は気軽にできるようになっていたことが発表者のお話を1日お聞きしてわかりました。又、荒れ果てないようにするため耕作放棄田を市民農園として活用したい農家や、自治体にもうれしい希望を託してくれました。
始まる前は他の分科会も覗いてみたい気持ちがありましたが、千葉県農林水産部の岩井氏の農地法改正の歴史と現在の都市化と農地の観点からの説明を聞いて、おもしろくなり他の分科会に行く浮気ができなくなりました。特に田んぼの市民農園の実践事例を話された所英亮氏(元多古町農業委員会会長)は10年前に多古町で日本で初めて、農家が開設する市民農園を始めた方で、当時の推進者としての経緯と苦労を話されました。減反せず産直を課題として農地法や食管法に抵触せずに農地所有者でない方が農地で栽培できるようになった歴史的なことだと思います。
大江靖雄氏(千葉大学園芸学部教授)が生産者と消費者の交流を通じた参加型の農地のあり方の良い事例として、農業者が中心的役割を担った「練馬方式」及び農業生産法人「青空農園」を説明された。
「消費者と生産者をつなぐ」話しを戎谷徹也氏(大地を守る会職員)がされ、精力的に実験田的なことも実施しており、例えば、海のミネラルを入れようと三番瀬の海藻アオサ(青潮の原因になる)を採って水田の上にかぶせたこともあった。特に「海が田を作り、有機農法が海を救う」という言葉も紹介され、感銘を受けた。
このアカデミアパークに来て1日里山のことをゆっくり考える時間ができ、ちば環境情報センターが実施している谷津田プレーランドプロジェクト(通称YPP)などがもっと立ち上がって来る予感がします。


地球にありがとう、みんなにありがとう

八日市場市 萩原 真紀  

 初夏のようなお日様超ご機嫌の4月18日、無事に『アースディinあさひ』を開催することができました。
当日は、21のテント(食べ物屋,マッサージ,野菜販売,工作教室,活動展示など)と24のフリマが出店。ステージでは地元のお囃子,よさこい,個人芸やコンサートが披露され、行政の協力もあり、たっくさんの人たちが遊びに来てくれました。情報センターのブースでは、穀物コーヒーや手作りケーキの販売,プロの漫画家による似顔絵屋や工作教室などが行なわれ、お客さんに大人気でした。
普段地道に環境活動をしている仲間が集まれたこと,日々の生活に疑いも持たない市民が足を運んで地球に感謝する1日を一緒に楽しんでくれたこと,天候にも恵まれ、初めてのイベントとしては大成功だったと思います。会員の皆様にもいろいろご協力いただき、ありがとうございました。あの日の興奮と気持ちのいい風、皆の笑顔が忘れられません!来年もよろしくお願いします。


アースディ千葉に参加して 

千葉市美浜区 佐々木 典子  

  第3回アースディ千葉が5月23日に稲毛海浜公園で開催されました。



法人 ちば環境情報センターのブース 自然素材を使った工作にはたくさんの子どもたちが集まった

ちば環境情報センターは初めての参加でしたが、無料講習(縄ない,どんぐりトトロ,ヘンプのストラップなど)やインドネシアの子どもたちの絵画展、わりばし細工の展示、日頃の活動の紹介パネル等盛り沢山の内容でした。他には無農薬野菜の販売,地球村の環境紙芝居,リサイクル衣料の販売,手作りお菓子,手作りパンの販売,藍染体験,稲毛の浜ごみ拾い隊,フリーマーケットもあり、踊りやコンサートなどのパフォーマンスも充実していて、散歩の途中にふらりと立ち寄った人も、参加者も、出展者も、主催者も皆がこの日を楽しもうという気持ちが感じられたイベントでした。


編集後記: 5月8日に実施した下大和田の田うえで、セルカリアによると思われる皮膚炎が発生しました。セルカリアは農薬を使わない田んぼに発生するそうですが、ここも完全無農薬4年目になります。思いがけない出来事でしたが、安全で生物に優しい米づくりにはこうしたリスクはつきものと受けとめましょう。 mud-skipper