ちば環境情報センター
2000.9.6 発行    ニュースレター第38号

代表:小西由希子


目 次
  1. 水鳥たちがつなぐ千葉と極東ロシアの自然
  2. 環境保護と人間
  3. メダカと大百池
  4. 市町村のゴミの現状調査について

水鳥たちがつなぐ千葉と極東ロシアの自然

-特別展『知られざる極東ロシアの自然』紹介- 

 千葉県立中央博物館 倉西 良一

皆さんは極東ロシアという言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか?『 ロシアは、何を考えてるのか理解しがたい』『経済困窮の状態にある』『領土問題が未解決』『シベリア抑留』『寒い』など明るいイメージの要素が少ないのではないでしょうか? 多くの方が、私達にとっての隣人である極東ロシアに、関心を持たない大きな理由は暗いイメージにあるのかもしれません。私たちは、極東ロシアに対して無関心でよいのでしょうか?
 このような問いかけがあります。『冬になると日本にやってくる渡り鳥たち、ハクチョウやいろんな種類のカモたちは、どこから飛んでくるのでしょうか?』『ベニザケ・タラバガニなど私たちの食卓を豊かにしてくれる食材はどこでとれたものでしょうか?』答えは、日本のすぐ隣にある極東ロシアなのです。私たちの身の回りの自然と極東ロシアの自然は深いつながりをもっているのです。その意味で三番瀬や印旛沼は、水鳥たちにとっては、極東ロシアの自然につながっているのです。この秋に公開される、特別展『知られざる極東ロシアの自然』では、近くて遠かった極東ロシアの自然を少しでも身近な話題として紹介できるよう企画しました。
 私たち日本は、(意識はしてなくても)経済的に恵まれた生活をしています。私たちが無意識に消費する資源が、極東ロシアの大規模な自然破壊と交換でもたらされているかもしれないのです。私たちは、本当に極東ロシアに無関心でよいのでしょうか?
 極東ロシアにはタイガという広大な森林が広がっています。東南アジアの熱帯林(南洋材)が大部分切りつくされた今日、世界の木材市場は極東ロシアのタイガを狙っています。日本だけではありません、韓国、中国、マレーシアの企業までも伐採をはじめています。ロシアの経済的な困窮がこのような状況を拡大させているのはいうまでもありません。伐採したあと、コストのかかる植林などの修復・再生などを全く行わない、切り逃げ(カット アンド゙ ラン)が横行しているのです。
 タイガ(大森林)の消滅は、どのように私たちにはねかえってくるでしょうか?森林が消滅するとまず、地表の温度が上がります。すると永久凍土が融け始め、地中に眠っていたメタンガスの発生を引き起こします。メタンガスは、二酸化炭素の20倍の温室効果をもたらすので、地球の温度はますます上昇します。それがさらなる永久凍土を融かしてと、悪循環が続いてしまします。このように、極東ロシアの自然破壊は大規模な地球環境の変化をも引き起こしかねない状況なのです。当然私たちも無事ですごせるわけはありません。
 今日、私たちは地球環境を考えなければいけない時代に生きています。極東ロシアの自然は、私たち日本人にとっても大切なことを展示会を通して伝えたいと思っています。ちょっと暗い話ばかりになりました。ここで展示会の紹介をしたいと思います。
◎いざ極東ロシアへ
 『日本の生物相は大陸の出店である』といわれるように,大陸には日本で見られるものと同じような動植物が生息しています.日本の生物相をより深く理解するためには,日本の動植物を調べるだけでは不十分で,大陸の生物との比較・研究が欠かせません.しかし極東ロシアは距離的に近くても、つい最近まで大変遠い存在でした。
 私たちは、すぐ隣の極東ロシアにどのような自然を見ることできるのでしょうか?このコーナーでは、極東ロシアの自然景観や代表的な生物について紹介し、その魅力を伝えます。
◎小さな虫にも大きな発見
 千葉県立中央博物館はロシア科学アカデミー極東支部との共同研究として,1996年と1997年の2回のカムチャツカ半島や北千島の生物相を調査しました。両地域は生物地理学上の重要性にもかかわらず戦後50年間、国境特別地域という厚いベールを被った地域で、ロシア人にさえ立ち入りが制限されていた所です。カムチャツカ半島や北千島での現地調査は、「寒い夏」、「襲いかかる蚊の大群」、「いたるところにあるヒグマの足跡」など多くの困難を伴いましたが、調査で訪れた地点では、さまざまな生物を採集することができました。このコーナーでは、学術調査で採集し、これまで研究された生物を見ていただきたいと思います。昆虫類は、色彩が地味で体も小さな種類が大半を占めますが、甲虫やハエの仲間から新種が6種も発見され、新しい知見が沢山生まれました。小さくて目立たない昆虫も大きな謎を秘めています。決して侮ることはできません。
◎北の妖精たち/極東ロシアを彩る植物
 日本では高山蝶として名高いウスバキチョウ・ミヤマモンキチョウ・タカネヒカゲはどこからきたのでしょうか? 関連する種や亜種にはどのようなものがいるのでしょうか? 日本に生息する高山植物や高山蝶とよばれている生物は、その由来や親戚(近縁種や亜種)を極東ロシアに見つけることが出来ます。ここでは日本の高山蝶や高山植物と極東ロシアとの関係を探ってみます。極地にしか見ることのできない植物、極東ロシアの特産の植物、日本と共通な高山・極地植物など極地の短い夏を謳歌する可憐な生き物たちを紹介します。
◎体験!極東ロシア
 このコーナーでは、極東ロシアに生息するさまざまな獣の毛皮を紹介します。トナカイ、ヒグマ、ホッキョクギツネ、キタキツネ、ゴマフアザラシ、オオヤマネコ、オットセイなどの毛皮を準備しました。実際にさわって下さい。冷たい世界で暮らす動物たちの適応を肌で感じることが出来るでしょう。千葉県立中央博物館が海外調査で実際に使った装備の一部を紹介します。調査隊員は、どんな道具で生物を採集し、どんな暮らしをしていたのでしょうか? ビデオコーナーでは、調査で訪れた北千島やカムチャツカの自然景観や調査風景を紹介します。
◎水鳥がむすぶ日本と極東ロシアの自然
 1996年カムチャツカ半島を調査していたとき、目の前をユリカモメが沢山飛んでいました。ユリカモメといえば東京湾を思い出します。どうして極東ロシアで身近な鳥に再会したのでしょうか?これは日本で生活する鳥の多くが、夏は極東ロシアに渡って繁殖し、また日本に帰ってくるからです。冬になると舟田池や三番瀬で羽を休めるカモ、シギ、チドリなどの冬鳥とよばれる鳥のほとんどが、極東ロシアで繁殖して戻ってくるのです。その意味で、私たちの自然は、水鳥たちによって極東ロシアの自然につながっているといえるのです。このコーナーでは、いかに多くの種類の鳥たちがビザなしで、極東ロシアと日本とを行き来しているか見ていただきます。そして鳥たちの生息地である湿地の国際間での保護なども紹介します。
◎絶滅の危機 - 極東ロシアの王者・シベリアトラ -
 1995年に極東ロシアを訪問して驚いたのは、新潟空港から僅か1時間半の距離にあるウラジオストック郊外の自然保護区には、いまだに野生のトラが生息していて、林道を歩いていると糞が落ちていました。しかもそのトラは、世界のトラの亜種の中でも最大の大きさを誇るシベリアトラ(ウスリートラ)で、落葉広葉樹の森に住んでいました。そのシベリアトラが絶滅の危機に直面しています。原因はどのようなものでしょうか? 一緒に考えてみたいと思います。今回の展示会では、全長が3メートルを超える世界最大級のシベリアトラの剥製を展示します。その美しく威厳ある姿は、一見の価値があります。
◎極東ロシアの自然保護
 1997年北千島のパラムシル島の海岸線を移動中、いたるところにゴマフアザラシやラッコ、エトピリカなど海鳥たちの群れを見ることが出来ました。極東ロシアには、手つかずともいえる自然がまだ残っています。そこにはかっては日本にも生息していたのに、すでに絶滅してしまたり、極端に数が少なくなった生物が沢山住んでいます。私たちが失ってしまった自然を極東ロシアから学ぶことが出来るのです。大自然が残る一方で、極東ロシアは、大きな開発の波が押し寄せています。無秩序な森林伐採は、その周辺に生息する動物だけでなく集水域全体の生物相を破壊します。利潤のみを考えた漁業は、水産資源だけでなく海で暮らす哺乳類や鳥たちに壊滅的な被害を与えてしまうでしょう。極東ロシアでの自然破壊は、気象変化や海水の水質変化などを引き起こし私たちの生活基盤さえ脅かすかもしれないのです。私たちが極東ロシアの自然に対して出来ることを一緒に考えてみましょう。
 展示会は、小さな子供から大人までが楽しめるように構成されています。是非この機会に千葉県立中央博物館にいらして下さることをお待ちしております。

開催期間:2000年9月30日〜12月3日
倉西のメールアドレス:kuranishi@chiba-muse.or.jp
千葉県立中央博物館のホームページ:
HPhttp://www.chiba-muse.or.jp/natural/index.htm


環境保護と人間

千葉市緑区 石井 信子 

 6年生の国語に「釧路湿原とタンチョウ」を例にとり,「環境保護と人間」について考える学習がありました。子ども達は,「野生動物は守らなくては」というものの,それは自分とはあまり関係のないことのようでした。ところが,「新しい公園」の計画から関わり自分達のアイディアを取り入れてもらった公園作りを通し,子ども達に新たな疑問が出てきたようでした。「もっと自然が残されると思っていたのに,ずいぶん木が切られてしまった」「ナナフシやカナヘビはどこにいってしまったのかな」と,自然保護と開発の難しさ,現実の厳しさに気がついたようでした。ちょうどそんな時,新聞に「大百池(おおどいけ)公園のメダカ絶滅?」という記事が載り,クラスの話題になりました。国語での学習を生かし,身近なテーマで「環境保護と人間」について考えてみることにしました。グループで調べたいことをきめ,できるだけ多くの情報を集め,意見文を書いてみることにしました。また,自然保護の活動をしている方に来てもらい,開発と自然保護について日本の各地の実例をスライドを交えて,話をしてもらいました。人間の身勝手さや,開発はいけないとは言い切れない問題など子ども達に新たな視点を与えてくれました。
次の文は3人の女の子達が「メダカと大百池」について,いろいろな方にインタビューしたり,本で調べたりしながら,まとめたものです。学級で発表会をしました。これで学習が終わりではなく,これからも続けていきたいと考えています。たとえば,みんなでロールプレイを考えて,討論会をしてみるなど学習は始まったばかりなのかもしれません。   (千葉市立扇田小学校教諭)


メダカと大百池

千葉市立扇田小学校 6年 仙崎 杏奈 (一緒に調査した友達 小笠原理子、野村春佳)

大百池公園は,おゆみ野地区最大の公園です。子どものころから大百池の周りで遊んですごしたという5年生の先生に話を聞いてみると,昔の大百池は,昼間でも薄暗くあまりきれいではなかったけれど,池の中や近くの水路には生き物がたくさんいたそうです。そして,メダカもたくさんいました。
 しかし,今の大百池にはメダカはいません。なぜでしょうか。そこで,私はメダカが消えた原因を調べることにしました。
 今一番問題なのは,開発によって棲む場所がなくなって死んでしまうメダカのことです。メダカに限らず水の中の生き物達はみんな苦しんでいます。大百池もその中のひとつです。大百池は平成八年度に池の清掃をしました。公園建設課の方に聞くと,池の水を半分安全な場所に移して,清掃をしたということです。その後,護岸整備されたきれいな大百池に戻されました。メダカにとってすみなれた池から大きく変わってしまった池になり住みにくいところになってしまったのではないでしょうか。
 5年生の時
理科でメダカの学習をした時,おゆみ野にはメダカがどこを探してもいませんでした。そこで,中央博物館の生態園に行ったところ,たくさんのメダカがいました。学芸員の先生の話だと,「メダカが敵から見を守ることができる,隠れ家があること,静かな流れがあること,人間が入り込まないところにメダカはいるんだよ」と教えてくれました。
 第2につりをしていた人が,他の池からブラックバスやブルーギルなどを放流してしまったせいです。この魚達はメダカなどの小さな魚を食べて生きています。数匹だったブラックバス達は,今では数百匹にもなってしまいました。
 このようにして,人間が自然界のバランスを壊して生態系を崩してしまったのです。隠れるところもなく,天敵の外来魚の前ではメダカは何もできず,食べられてしまったのではないでしょうか。メダカは全国の地域でも同じように姿を消しています。そして,ついには環境庁のレッドデーターブックの絶滅危惧種になってしまいました。
 次にメダカがいなくなったらどうなるのか考えてみました。検見川高校の田中先生は,「メダカがいなくなっても人間はあまり困らないかもしれないね。でも,メダカが住めないということは,メダカとつながっている多くの生き物達が,住めなくなってしまうということになるんだよ。ますます絶滅に追い込まれる生き物が増えてしまうね」とおっしゃっていました。メダカがいるということは,多くの生き物がいるということ,川がきれいな証拠といえるのではないでしょうか。
 私は,これからやるべきことを考えました。私達の住んでいる家や店,病院なども結局は,多くの生き物達の棲みかを壊して作ったものです。でもそれは生きるために仕方がないことだと思います。でも,必要以上の開発はもうしないことが大切だと思います。もっともっとと欲を出さずに,多くの生き物達の生きていける環境が残ることを考えなければいけないと思います。
 最後に,メダカのように小さな生き物が自然の中にたくさんいることを忘れずに,人間の暮らしを進める事が大切だと思います。私は,自然と人間は昔は互いの力を出し合ってうまくバランスが取れていたのに,人間は自分のことしか考えず一歩前に出て開発を進めてしまったのだと思います。メダカの絶滅の危機はもう一度人間と自然が仲良くすることを,人間によびかけているのかもしれません。


市町村のゴミの現状調査について

ーーゴミ削減は必須!ーー  

八千代市 松尾 昌泰(千葉エコネット)

千葉エコネット(代表 野村幸平)では、各市町村のゴミ(一般廃棄棄物)の現状について学習した。千葉エコネットの会員は千葉県内に広く分散されているので、この強みを活かして、自分の住む市町村のゴミの現状を調査した。
今回、集めたデータは、南方面の勝浦、大多喜、君津、白子から、北方面の松戸、我孫子など15の市町村であり、データを比較しながら観ていくと、市町村のおかれた状況がよくわかる。
特に驚いたことは、多くの市町村は、自分の地域内に焼却灰などの最終処分(埋立て)をできないことであり、しかも、他の市町村に埋めていることである。たとえ、地域内に埋立てることができていても、いずれは埋立てるところがなくなってしまう。これは、考えなければならない大変重要なことである。今回の調査で、このような15市町村の実態と、自らの市町村のゴミの実態を、自分の目と耳で確認できたことの意義は大きい。
環境問題の中で、ゴミ減量が、最も身近で、自らが直ぐにでも努力しなければならないことであることを、あらためて再認識した。なお、参考までに調査の一端をグラフで紹介しておく。(2000年8月) 


ミニ集会「メダカはどこへいった」
 日本人に最も親しまれている魚「メダカ」が絶滅の危機に瀕しているという。
メダカはいったいどこへいってしまったのだろうか。
千葉市や佐倉市の調査結果から考える。
日時:9月10日(日) 13:00〜14:00
場所:検見川高等学校:JR京葉線検見川浜駅下車徒歩7分
主催:千葉県立検見川高等学校 TEL.043-278-1218
第1回 プレーパーク学習会
『こどもあそびってこれでいいの?』と以前プレーパークの学習会の記事を載せましたが、プレーパーク実現に向けて9月よりワークショップを開きます。興味のある方はぜひ参加して下さい。地域のこどもの情報を出し合い、どんな遊び場や環境が不足しているかを探ってみましょう。
日時:9月28日(木)10:00〜12:00
場所:四街道市文化センター
講師:矢郷恵子氏
 (新しい保育を考える会)
参加費:1,000円(資料代)
主 催:市民ネットワーク四街道
プレーパークを作る会
連絡先:古川(TEL&FAX 043-433-0987)
要申し込み
助成金の申請をしよう!
FMサウンド千葉(bay fm)では、環境保全や自然保護問題に取り組むボランティア団体の活動支援を目的とした募金活動を行っています。集められたお金は、千葉県環境財団を通じて、環境市民団体に助成金として交付されます。現在、助成先を募集しています。皆さんの団体でも、助成金の申請をされてはいかがでしょうか。
募集期間:9月1日〜30日
助成金額:上限30万円
申請・問い合わせ先:財団法人千葉県環境財団環境学習室 TEL.043-246-2180 (文責 伊原)

編集後記:市原市の草刈堰に行って来ました。ヒシの上を舞うたくさんのチョウトンボにしばし時を忘れ、水面を埋め尽くすサンショウモにびっくり。こんないいとこがまだあったんですね。   mud-skipper