ちば環境情報センター
1999.11.5 発行    ニュースレター第28号

代表:小西由希子



      目    次
  1. 行徳橋可動堰の大規模改修計画を考える
  2. な〜んて谷津田 2
  3. 戦争と環境破壊:ドナウ川汚染の実態
  4. 環境ホルモン理解講座に参加して
  5. ケナフについて
  6. 環境シンポジウム1999千葉県会議に参加して

行徳橋可動堰の大規模改修計画を考える

市川緑の市民フォ-ラム事務局長 佐野 郷美

江戸川放水路の付け根部分にかかっている行徳橋は可動堰としての機能も合わせ持ったもので、よく見ると橋の下が水門になっている。 旧江戸川側にも江戸川水閘門があり、普段可動堰は完全に閉じられ、江戸川の水位は水閘門の開け閉めにより管理されている。こうすることによって、江戸川をダムのようにして河川水をため、飲料水、工業用水、農業用水などに利用するとともに、海水の遡上を防いでいるのである。

この可動堰のすぐ上流部のヨシ原には絶滅危惧種ヒヌマイトトンボが生息し(市川市の天然記念物)、すぐ下流部の両岸には泥干潟が広がり、トビハゼが生息している。この地は日本における北限の分布地で、絶滅の恐れのある地域個体群としてレッドリストにも掲載されている。また、利根川や渡良瀬川の上流部で大雨が降ると可動堰が開けられ、大量の淡水が江戸川放水路から三番瀬へ流れ込んでいく。昨年2回、そして今年も1回開けられたが、昨年9月の台風5号の時には毎秒1,500の淡水が放水され、三番瀬のシオフキガイやアサリなどが大量に死んでしまった。また突然の淡水の流入が青潮発生の引き金になることもあるので、可動堰の開閉が三番瀬の環境に与える影響は非常に大きい。建設省は1013日可動堰が老朽化していることを主な理由として、この可動堰を大規模に改修する計画を発表した。計画の概要等は次の通りである。

200年に1度の確率で降る大雨(1947年カスリーン台風クラスの大雨)を想定し江戸川には毎秒7,000の雨水の流す。

・この時、旧江戸川側には全く流さずに、毎秒7,000の雨水すべてを放水路に流す。 

・幅100mで毎秒4,500の雨水を放流できる現可動堰から上流170mの位置に、幅260mで毎秒7,000の雨水を流せる規模のものに新設し、上流部の河床はさらに1.52m掘り下げる。

・ヒヌマイトトンボの生息地は消滅するので、上流部への生息地の拡大を試みている。

・トビハゼの生息する泥干潟も失われる可能性が高く、放水路の環境への影響については今後調査するが、三番瀬に与える影響については調査しない。

この計画が、絶滅危惧種ヒヌマイトトンボの生息地、北限のトビハゼの分布地を破壊し、同時に三番瀬に与える影響は計り知れない。三番瀬の埋立て計画の是非をめぐって、千葉県は3年という月日、6億円という費用をつぎ込んで補足調査を実施し、その結果を踏まえた見直し案が現在検討されているが、大量の淡水が三番瀬へ流入することは考慮されていない。すでに浅瀬と干潟の9割が失われた東京湾奥部の環境保全およびその復原、さらにはワイズ・ユ−スが求められているときに、この問題だけが棚上げになってしまってよいのであろうか。7,000/秒の流量を確保しなければならない理由、それらをすべて放水路に負担させなければならない理由については、利根川流域全体の治水計画と深く関係しているので、利根川流域全体の開発のあり方、まちづくりとつながる大きな問題である。

近年になって「自然な水循環の再生」が各方面から指摘され、建設省自らもそれを打ち出し始めている。この「自然な水循環の再生」という観点から利根川・渡良瀬川及び江戸川流域を見直し、荒れた森                         林を再生させて緑のダムを復活させたり、浸透機能、遊水機能を持つ地域を広げることによって、江戸川が

負担すべき流量を削減したり、旧江戸川にも応分の負担をさせることで、ヒヌマイトトンボ、トビハゼの生息地を保護し、三番瀬にも極力影響を与えないように計画の見直しを行ってほしい。

新しい河川法は、河川の景観とそこに生息する生物に配慮すること、地域住民と十分に協議することを強調しているが、現時点では前者について十分な配慮がなされているとは考えられない。また後者については、1111日建設省は地域住民、環境団体、行政等で構成する「懇談会」を開催するので、そこでの議論が単なる「ガス抜き」で終わることなく、計画策定に是非生かしてもらいたい。また、千葉県は、今後三番瀬の埋立て計画を検討するにあたっては、可動堰改築計画が三番瀬に及ぼす影響にも十分に考慮すべきである。

行徳可動堰の図


な〜んて谷津田 2
(本誌をご覧ください)


戦争と環境破壊:ドナウ川汚染の実態

千葉市美浜区 小久保 宏

 ドナウ川は大河(見たことないが)であるだけにコソボ紛争のなかでその「汚染発生」が報道されたときには、驚きました。環境保護団体や自覚した人々が営々と保護、維持してきた自然に対する戦争の破壊的な力をみて、あらためて「平和」の意味を考えさせられました。原水禁大会・長崎に初めて参加した私に、この両者の意味を考え直す夏になりました。
 その後のドナウについて判ったことをお知らせしましょう。UNEPとHABITATは紛争の影響を調査するBTF(BALKAN TASK FORCE)を編成しました。以下はBTFが10月14日発表した「セルビアにおける環境の危機状況を抱える4地域への人道的な緊急援助の要請」のあらっぽい要約です。汚染4地域のうち3地域はドナウやその支流に隣接しています、そして首都ベオグラードを中心に住民の多数住んでいる、半径約100kmエリア内にあります。それは1)Pancevoは多様な産業が集中,2)KragujevacのZastavaは自動車産業,3)Novi Sadには石油精製所,4)Borには鉱物精練所があります。

 この地域で起こった危機状況とは、1)でEDC,DDT類、水銀の汚染がドナウへ流入した、2)では保管の不備からPCBとダイオキシンによる汚染発生、3)生成された汚染物質の水質への影響、硫化ガスが拡散、4)破壊された機器中のPCB管理がなされていないという事態をさしています。BTFはドナウ全流域が破局状況であるとはいっていませんが、流域の堆積物と生物相のサンプルの分析は上流も下流も紛争の悪影響を受けており、緊急にユーゴ連邦の責任で流域全体の関係国による水質監視体制の設置を求めています。

 懸念される劣化ウラン兵器について、BTFはその使用実態ついてはわずかな情報しかない。なによりも使用さた地域での住民へ危険性の周知や手当ての必要性がある。NATOは全面的な情報開示に責任があると指摘しています。

文中の略語についてUNEP=UNITED NATIONS  ENVIROMENT PROGRAM 国連環境計画,HABITAT=UNCHS(UN CENTER for  HUMAN SETTLEMENTS)国連人間居住センター,BTF=バルカン(戦後)対策本部とでも,地名は原文のまま原資料はGREEN PEACE JAPAN提供のUNEP PRESS RELEASEによるもの、抄訳の文責は小久保。


環境ホルモン理解講座に参加して

船橋市 青木よし子

友人に「環境ホルモンについての勉強会があるんだけど」とお誘いを受けるまでそういう講座があることすら私は知りませんでした。
 午前中はダイオキシンの講演会に出て、その足で会場の高根公民館へと自転車を走らせました。午前・午後と連続で頭を使う集まりに出るのはかなり不安でした。と言うのは、午前中はともかく午後からの講座では居眠りばかりになってしまいそうでしたので…。(今私は更年期で身体のあちこちの機能が狂いだしていてこの頃は絶えず眠くて仕方ないものですから…)

講座の内容は環境ホルモンの事だけと思っておりましたが資料を見ると他にも電磁波・紫外線など 私が気にしている事が書いてあり嬉しくなりました。思わず「電磁波の事が知りたい」と口走りましたらにこやかで関西なまりのある南川先生は「皆さんの興味のある所からやりましょう。」と質問を受けながら進めてくださいました。

 電磁波では動力ミシンやコピー機からの出る量の多さに驚いたり パソコンの枠にマグネシウムが使われている機種がプラスチック枠の機種より最大2000倍も電磁波が少ない事がわかりました。またデスクトップファンから1000mGも出ているなんて…。でも1番気になるのは頭に密着して使用する携帯電話の事で息子には「あまり使用しないように」と口うるさく注意しています。私自身としましてはホットカーペット上でうたた寝しない様心がけたいとあらためて思いました。
 日常の必需品や乗り物からも電磁波攻撃を受けているわけで極力避けられるものは避けて生活すべきだと思います。またアメリカやスウェーデンの50cm離れた位置で0.5mG以下という電磁波の基準を日本も設定して欲しいと思いました。

 紫外線の話では昔と違い美容上だけでなく健康上にも悪いUVBという紫外線が降り注ぐようになってきているんですね。農作物が今後光合成が阻害されて収穫量が20%落ちる品種も出てくるのは「植物の日焼け」という分かり易い言葉での説明に妙に納得してしまった私です。

 環境ホルモンなど人間が作り出した化学物質で地球上の動植物に影響(被害)がどんどん出てきていて人間はそれを少しは回避する方法もありますがその他の生命は何の防御も出来ません。それを思うと何だか人間である事が申し訳なく思えてきます。せめてこの日初めて知った「グリーンコンシュマー」という賢い消費者でありたいと日常生活を見なおしています。2時間半の講座中一度も眠くならなかったのは身近で分かり易い言葉で説明して下さったからだと思います。ありがとうございました。


ケナフについて

千葉市稲毛区 平田 和博

ケナフは半年で高さ3mほどに成長するアオイ科のフヨウやオクラと同属の1年草で、単位面積あたりの年間収穫量が樹木の5〜6倍あります。このことは空気中の炭酸ガスを多量に吸収していることになり、環境にやさしいと言われております。
ケナフの皮に含まれている繊維は長くて強いため、タイや中国など東南アジアでは麻の代用品として栽培されています。数年前、米の不作時にタイから米を輸入したことを覚えているでしょう。タイ米はケナフ製の袋に入れられてきました。またアメリカでは50年ほど前から紙の代替え原料として研究し、木材パルプと同質な紙を作ることに成功しました。しかしコストや収穫量の問題で、現在では牛の肥料として栽培しております。そのため、東南アジア産のケナフは麻のように幹が真っ直ぐ延び、アメリカ産ははが丸みをおび、枝が横に広がります。
このところ環境にやさしいということでケナフ栽培が盛んに行われていますが、栽培だけで終わっているケースが多く残念に思っております。これはパルプ作りを知らないからだと思います。パルプ作りはさほど難しいことではありません。ケナフ栽培から紙すきまで、一貫して指導してくれる「エコフレンド」に指導依頼するといいでしょう。パルプ作りから紙すきまで1日でできます。
 自分がまいたタネから3mほどの高さの木が育ち、花を咲かせ、そして世界に1枚しかないはがきやカードを作るのは素晴らしいことです。あなたも自分のはがきやカードを作って楽しんでみませんか。

エコフレンド(事務局:平田恵美 Tel&Fax 047-438-3880)


環境シンポジウム1999千葉県会議に参加して

第5回環境シンポジウム1999千葉会議が、10月17日シャープ幕張ビルで行われた。小川かほる氏(千葉県立中央博物館)の基調講演「持続可能な社会は市民社会!?」に続き、午後から5つの分科会に分かれてテーマ別に討議された。ちば環境情報センターの会員も実行委員やスタッフとして、それぞれ主体的にかかわった。以下、参加者から寄せられた感想である

男性グリーンコンシュマーの方の実践内容を話して欲しいと依頼され、こだわりの行動3点(水筒持参、左ポケットにレジ袋そして自転車通勤)を発表させてもらいました。「消費者が変わればお店が変わる。お店が変わればメーカーが変わる」を目標に参加者と討論し、今我々にできることは幼児期からの環境教育と社会のシステムを変える主体は市民だとグループの結論になりました。ひとりひとりの努力は小さくても集まれば大きくなります。 (南川 忠男) 当シンポジウムも5回目ともなると、実行委員も参加者もなれてきたのか、会議はスムースに進行したようだ。私が参加した第5分科会「持続可能な社会をめざして」はピカソの絵のように人によって解釈が異なる内容だったので、みんな勝手な意見を言い合ったかたちになってしまった。当分科会では、この1年間のテーマに沿った実践計画を作ることになっていた。いろいろと提案がなされ、私は自然農法を勉強することにした。農薬を使っているプロの畑のど真ん中で、素人の菜園が無農薬でどれだけ耐えられるか挑戦することにした。今回の会議で、パートナーシップを取り上げられなかったことは残念だった。三番瀬や成田など、千葉県で抱えている大きな課題なのに。 (平田 和博)
さすがに日頃から環境に関わっている人が多いため内容が濃く、新しい知識も結構増えました。環境って楽しくて、やればやるほど奥が深くなっていく面白さを秘めていると思います。シンポジウムが終わって実行委員という重みから開放されたせいか、打ち上げの頃から、自分の中でどんどんやりたいことが膨らみ始め、それは家についてからも膨らみ続け、あれもやれる!これもやれる!あれもやりたいっ、これもやりたいっ!と、まさに無限大に広がる可能性を感じました。(伊原香奈子)

参加して得たもの。
1.パートナーシップで問題を解決することはなが〜い道のりなのだということ
2.「人を動かすにはまずは自分が動くこと」が大切だということ。
第5分科会ではシンポジウムの継続にむけて白熱した議論が展開された。毎年新しい参加者があり広がりを感ずる。シンポジウムを通してたくさんの人と知り合い
多くの経験をさせていただいたことを心より感謝している。  (こにこに)


ー ー ー お 知 ら せ ー ー ー

事務局からのお知らせ

Bay FMからの「Love Our bay 募金交付金」について:
ちば環境情報センターに11万円の交付が決定されました。


「ちば・谷津田フォーラム」からのお知らせ

111日現在 会員数60名 

1023日の谷津田フォーラムにてカンパも51,346円集まりました。ご協力これからもよろしくお願いいたします。

編集後記
江戸川放水路行徳橋下流の干潟では、高さ5cmほどの泥煙突ができ始めました。
トビハゼはその中に入って、じっと春のおとずれを待ちます。
mud-skipper