ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第243号 

2017.10.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 福島 阿部農園発「ちょっと遅い夏だより」
  2. 電力切り替え、まだの方はこちら!-千葉で選べる「パワーシフトな」電力会社-
  3. グリーンインフラと生態系インフラ-持続可能でレジリエントなコミュニティづくりのために-2

福島 阿部農園発「ちょっと遅い夏だより」

福島市 阿部 一子 

 いまだ外出するときには、きちんとマスクをして“福島県産のものは食べません”という人に出会うと、福島で米や梨を作っている農業生産者として、「ドキッ」とします。
 ここで農家として生きていくために、放射性セシウムの付着した梨の木の皮を削り、園地除染もしました。
 昨年、“幸水”を放射性検査に出すと、セシウム134・137ともに“不検出”でした。2012年までの10年間は測り続けるつもりです。
 幸水の収穫は8月24・25日頃から始まるのではないかと思います。今年もまた、我が家の梨におつきあいいただければ幸いです。
 7月23日、原発事故の時3歳だった孫は5年生になりました。今年も北海道へ3週間の保養へ行きました。22人のこどもたちを小樽の隣、仁木町にある札幌協働福祉会の保養施設に送っていくボランティアとして、娘と参加しました。
 受け入れてくださる皆様に心より感謝します。原発事故から6年がたち、保養プロジェクトの数も減り、保養に行ける子どもは、ほんのわずかになってきました。
 福島は安全なのか、福島で生きているこどもたちは、保養が必要なのか?だれのいうことを信じればいいのか?子育て中の親の悩みはつきません。
 子どもを保養に行かせることができた親、保養に行かせたいと思っていたのに、行かせることができなかった親、複雑な思いが交差します。重たい現実です。

 2016年10月に放映されたNHKスペシャルを見て、計算に弱い私が計算してみました。
 2015年3月から始まった除染廃棄物を、中間貯蔵施設の建設予定地の保管場へ運ぶ県内のパイロット(試験)輸送で(2015年度は45,000㎥の予定)13,000袋を運ぶ際に、6,843袋が劣化していたというのだ。
 詰め替え用の袋1枚の値段は14,300円。詰め替える前に使われている袋(フレコンバッグ)の値段は1枚10,000円。原発事故から6年がたってしまっています。
 フレコンバッグの耐用年数は3年です。紫外線や日光にさらされていると劣化しやすいのですが、土の中または土のうで囲ってブルーシートをかけているので、5~6年はもつのではないかと市の職員が説明。
 学校や公共施設・公園などは、2011年内に除染が終わりましたが、いまだに敷地内にとどまっています。どのくらいの汚染度が出たのかは定かではないのです。市政だよりによると、はっきりとした数字が分かるのは、福島市内の住宅除染が完了した家の分だけで、その数は94,525戸です。1軒につき汚染土が仮に3袋出たとして(我が家は農家で庭が広いので34袋でした)
 3袋×94525戸×(袋代)10,000円=2,835,750,000円
 その半分が劣化しているとしたら(半分以上が劣化しているのでは?)
 1.5袋×94525戸×(詰め替え用袋代)14,300円=2,027,561,250円
 これは福島市内だけ。しかも住宅除染だけ。しかもしかも袋代だけの単純計算です。住宅除染が終わって今は果樹園地の除染をしています。汚染土を入れる袋の数は、どれくらいになるのか見当がつきません。
 除染は環境省が担い、袋代は私たちが納めた税金から出ています。私たちの納めた税金が、汚染土を入れる袋代として消えていく。腹立たしく…悲しくなってしまいます。
 今、原発の廃炉作業に向けて働いている人が1日6,000人。危険手当があり1日の労賃20,000円×6,000人=120,000,000円①
 これが1日に支払われる労賃ですから、①×1年365日×6年=262,800,000,000円(目が点です)。莫大なお金が原発事故の片付けのために使われています。
 廃炉仕事をしている人たちは、国策の原発事故の片付けをしているので、国家公務員とすべきじゃないのかな。下請けの下請けの下請け…、この人たちの受け取る金額は20,000円ではありません。

 (2017年8月7日発行の阿部農園発「夏だより」から、筆者の許可をいただき抜粋掲載させていただきました。)


電力切り替え、まだの方はこちら!
-千葉で選べる「パワーシフトな」電力会社-

国際環境NGO FoE Japan 吉田 明子 

 電力自由化特集の3回目は、千葉県で具体的に選べる電力会社についてみていきます。パワーシフト・キャンペーンで紹介している、再生可能エネルギーや地域を重視している電力会社のうち、千葉県で契約できる電力会社をまとめました。毎月数千円、年間で数万円のあなたの電気代をどこに支払うか。それは未来への意思表示です。より詳しい情報はこちら http://power-shift.org/  もしくは各社ウェブサイトへ!


グリーンインフラと生態系インフラ
-持続可能でレジリエントなコミュニティづくりのために-2

東京情報大学 総合情報学部 環境情報研究室 原 慶太郎 

3)レジリエンスとEco-DRR
 
 2000年代から、各地で暴風雨や地震・火山などによる大規模な自然災害が頻発しています。2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震・津波によって、亡くなったり行方不明になったりした方は18,000人を超え、2016年4月の熊本地震でも200名を超す方が犠牲になりました。2005年8月に米国東部を襲ったハリケーン・カトリーナでは、暴風雨と洪水によって2,500名を超える死者・行方不明者を数え、2015年9月の関東・東北豪雨では、死者8名、避難勧告は315万人に及びました。今年に入ってからも全世界で豪雨や突風、季節外れの大雪などの被害が報じられています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告では、これらの強風、竜巻、落雷、集中豪雨などを極端気象(extreme weather)と呼んで注意を喚起しています。
 このような災害が多発する状況に対し、レジリエンス(resilience)という言葉で、社会として対応できるような枠組づくりが提起されています。レジリエンスは、「はね返り」や「元気の回復力」などの意味で用いられる語句ですが、心理学では以前より用いられ、「逆境に直面したときに、それを克服しその経験によって強化される、また変容される普遍的な人の許容力」や、「困難あるいは驚異的な状況にもかかわらず、うまく適応する過程、能力、あるいは結果」を意味します。また、生態学においては、「生態系が同じ機能や構造を維持し、ある安定領域に留まるために撹乱を許容できる量または程度」のことを指し、「生態系の状態が撹乱を受ける前の状態にまで戻る速さ」、および「生態系が構造や機能を維持するために撹乱を許容できる程度の大小」という意味で用いられます(東北大学生態適応グローバルCOE 2013)。英国の王立協会では、「レジリエンス・シティ(Resilience City)」というプロジェクトを立ち上げましたが、ここでは、「個人・地域社会・人間社会と自然生態系を含む社会生態系が、たとえ自然災害にあったとしても、存続・適応・発展し、さらには新しい状態へ大きく転換すること」としています。
 一方、わが国では、2011年の東日本大震災以降、生態系を活用したリスクの減少という意味で、Eco-DRR(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)という言葉を耳にするようになりました。「持続的でレジリエントな発展を目指して、生態系の管理、保全と復元を行うこと」とされています(PEDRR 2010)。環境省が、「生態系を活用した防災・減災の考え方」に関する報告をとりまとめ公表しています(環境省 2016)。この中で、防災・減災に対する生態系機能として、1) 災害リスクの低減、災害発生時及び復興の各段階で効果を発揮、2) さまざまな災害で効果を発揮、3) 生態系のレジリエンス(回復力)と復興への貢献、4) 平時に多様な生態系サービスを発揮、5) 低コストで整備・維持管理が可能、6) 災害に強い地域コミュニティの形成、7) 地域の活性化への寄与、8) 気候変動対策への貢献、を挙げています。また、Eco-DRRの基本的視点として、1) 総合的な視点(時間的・空間的)で検討する、2) 地域で合意形成を図る、3) 地域本来の生態系と災害履歴や伝統的知識を活用する、4) 維持管理の仕組みを構築する、ことの4点を挙げています。

グリーンインフラ

 1990年代半ば頃から米国で、土地利用計画に関する意思決定において自然環境の重要性を強調するものとして、グリーンインフラという概念が広がりはじめ、特に都市計画分野において、水と緑を扱う多様な手法や計画に関連して使われてきました。米国環境保護局(EPA)ではグリーンインフラの定義を「地域社会が健全な水環境を維持するために選択しうる手法であり、多様な環境からの利益を得つつ持続可能な地域社会の維持に寄与する」としています。2013年に出された「新戦略アジェンダ」では、「連邦政府のさまざまな部署において横断的にグリーンインフラを通常の業務として位置づけること」が掲げられ、連邦政府の役割強化が謳われています。

   

 同じ2013年には、EU協議会から「欧州グリーンインフラ戦略」が公表されました(European Commission, 2013)(図5-1)。ここでグリーンインフラは、自然が人間に便益を提供する空間的構造を指し、正常な空気や水などの多面的機能をもつ生態系利益・サービスをもたらす自然の機能を強化することを目的としています。欧州戦略では、都市から田園地域までの緑と水の空間がインフラとして抽出されています(図5-2)。グリーンインフラの効能としてNatural England (英国の非政府部門公共機関)は、(1)人々が自然とふれ合うことができる野生生物の生活空間、(2)屋外のレクリエーション空間、(3)気候変動の適応、(4)環境教育、(5)地域での食料生産、(6)ストレスを削減し運動の機会を与えることによる健康と福利の改善、を挙げています。 最近では、地方自治体レベルでグリーンインフラに対する取り組みも進められ、英国西部の都市リバプールを中心とする地域では、市民を巻き込んだ行動計画づくりをはじめとする活動が進められています(図6)。

 


 このグリーンインフラは、ようやくわが国にも導入されつつあり、国交省や環境省など各省庁で動きがでてきている。最近では、高層マンションの屋上庭園やオフィスビルの壁面緑化の中には、地域の自然環境や生物多様性への配慮がみられるものが増えてきた(図7)。これらも都市の中のグリーンインフラです。 
                                                  (次号に続く)

      

フレンドシップキャンプへのご寄付、
どうもありがとうございました

 今年もフレンドシップキャンプに多くの皆様からご寄附をいただきまして、どうもありがとうございました。おかげさまで、ちば環境情報センターで8万円、ちば市民放射能測定室と合わせて10万円を、千葉YMCAさんにご寄付させていただくことができました。
 担当の千葉市少年自然の家 鶴岡義久さんからキャンプのご報告として広報誌「ゆくっと」が届きました。
 「8月16日~19日にフレンドシップキャンプを行いました。このキャンプは東日本大震災復興支援として、福島県伊達市の小学生43名を自然の家に招待し、サポート役として千葉市の小学生41名、ボランティア23名が参加しました。また、千葉市の子どもたちは福島の子どもたちをサポートし支えることで、ジュニアリーダーキャンプで学んだ「リーダーシップ」を実践しました。千葉市の児童と伊達市の児童がこの夏出会い、一緒に様々な経験をした様子をご報告します。」
 来年も実施の予定なので、またよろしくお願いいたします、とのことでした。ご協力くださいました皆様、どうもありがとうございました。
     ちば環境情報センター事務局
                                                        

【発送お手伝いのお願い】

  ニュースレター2017年11月号(第244号)の発送を1月8日(水)10時から事務所にておこないます。 発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。 


編 集 後 記

 アセス手続きを行わないまま稼働を始めた石炭火力発電所(仙台パワーステーション)に対し、住民が操業差止を求めて立ち上がりました。決起シンポジウムの基調講演で、日本の公害史で「欧米の研究者は、日本の公害対策は市民によって下から作られたと評価している」と話されました。今また市民の対応が問われています。mud-skipper