ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第216号 

2015.7.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. ミミズという生きもの -ミミズ勉強会に参加して-
  2. 最終処分場問題を考えてみた
  3.  我が家新築ものがたり⑪  ~電力事情~
  4. 千葉県にすむ哺乳類6 ニホンザル
  5. 貝のよもやま話 22 -切手になった貝-

ミミズという生きもの -ミミズ勉強会に参加して-

東金市 有馬 啓晃   

 2015年6月13日、千葉県生物学会主催の勉強会「ミミズの生態・分類・採集法を知ろう」(会場:千葉県立千葉高等学校)に参加した。
 当日は、前日に雨が降ったため湿度の高い日であった。私たちにとっては蒸し暑く過ごしづらい一日が予想されたが、「雨が降った次の日はミミズ観察に絶好の日です」と、講師をしていただいた石塚氏は語る。雨が降ったあと、深層種のミミズ(地表より30cm~数mの地中に生息するもの)がよく地表に出てくるのだそうだ。写真1はその言葉通り、地表に出てきた深層種のノラクラミミズである。動きが「のらりくらり」しているため、この名前になったのだという。覚えやすい名前である。
 午前中は、ミミズについての講座が開かれた。会場となった千葉高校の生物実験室には、石塚氏が自宅周辺で採取してきてくださったミミズが10種ほどシャーレに入れられていたが、私たちの目からはどれも同じミミズにしか見えない。ミミズを器用に選別し、シャーレに移していたのは、石塚氏が「確実に未来のミミズを担う若い研究者」として冒頭に紹介してくださった横浜国立大学の研究生、南谷氏である。実に見事な手さばきでミミズを分けていたが、ミミズを見分ける方法は「腹面を見ること」であり、講座内でもその方法が紹介された。そのポイントは

  ①体の断面の形 ②帯体の形・位置 ③剛毛の配置・数 ④外部生殖器の位置・形 ⑤背孔の有無

などであり、これらで大型ミミズの科レベルまで十分に同定することができるという。今回は、これら外部形態のうち、外部生殖器の位置での区別を教えていただいた。これを知るだけでもフィールドでおおまかに判断できるという。ただ、注意しなくてはいけないのが、そのミミズが「幼体か成体か」ということである。幼体のミミズでは、この外部形態がはっきりせず判断が難しいものが多いという。多くのミミズが成体になる(帯体がはっきり見える)のが7月あたりからだそうだ。
 
 また、会の中で石塚氏が特に強調されていたのが「ミミズがすみわけをしている」ということであった。実際、午後の部でミミズ採集を行うと、落ち葉をさっと払っただけで出てくるミミズがいた。これらは「表層種」である。また、地面を軽く掘ってでてくるミミズ、これらは「浅層種」である。そして、地中深くに生息し、雨の降った日の後に地表にでてくるのが先ほど登場したノラクラミミズのような「深層種」の3タイプである。よく観察すると、これら3タイプのミミズの形は、その環境に応じて確かに形態が異なっていることが分かった。表層種のものは深く土に潜る必要は無いため、ふっくらとして短めであり、浅層種のものはスリムで力強く細長い。そして深層種のものは筋肉が発達し大きかった。
   
 また、林や校庭の植栽周辺などの普段何気なく見ている土も、よくみれば団粒となっており、それらが全てミミズの糞であるということも驚くべきことである。これらは、生物の授業でも実験や観察素材として大いに活用できるものであると感じた。他にも、ミミズに関する情報が盛りだくさんの勉強会であったが、その詳細については、石塚氏が執筆した本「ミミズ図鑑:(発行所)株式会社全国農村教育協会」に数多くの見易い写真とともに記載されているので、本書を手にとってフィールドに出てみてはいかがだろうか。
 勉強会の終盤、石塚氏の話した言葉が大変印象深かった。
 「私たちがミミズについて知っている情報はとても少ない。そして、ミミズを研究している私にもわからないことがたくさんある。」会には若い学生も数名参加していたが、地球上の豊かな土壌を作り続けている未知の生物「ミミズ」について、その謎めいた生態の研究が今後も引き継がれ、さらなる発見・発展を遂げることを願ってやまない。

最終処分場問題を考えてみた

千葉市緑区 小川 沙弥香  

 みなさんもご存知かと思いますが、千葉市中央区にある東京電力の敷地内が千葉県の指定廃棄物最終処分場に選定されたことについてこの2か月ほどいろんなことを考えていました。
 私にとって東京湾のあの工場地帯の景色は子どもの頃からずっと見続けていた大切な景色です。家族や友達と海岸で遊び、彼氏と海を眺めながらデートをして、仲間とお酒を飲み、毎月ゴミ拾いもしていました。
 そんな大切な場所に絶対に作ってほしくない。それが正直な最初の気持ちです。その後詳しい説明を市民団体の方から聞く機会があり、処分場についての他県を含む報道を見たりして、私は自分の意見を決められなくなってしまいました。
 指定廃棄物はどこかの地域が必ず受け入れなければいけないものです。そしてみんな自分の地域には来てほしくありません。福島第一原発に持ち帰り集中管理すべきとの意見にもそうだなあと思うし、これ以上福島に負担をかけさせるべきでないとの意見にもうなずきます。
 自分が住んでいる地域は嫌だというのもエゴのような気がします。私にはどうするのがベストなのかまったくわかりません。ただ本当に難しい問題だからこそ納得のいく選定基準や方法をしっかり開示し、場所が決まったらこれでもかというほどの強固な施設を作り、運搬方法にも細かい注意を払ってほしい。そう切に願います。

 
 千葉市議会では「排出市町村が保管するよう再協議を求める」決議が可決され、市議会と市長が環境省に求めましたがまだ何も動いていません。
 一方国は、町内自治会連絡協議会や地元自治会・団体への説明会をおこないましたが、参加者からは100年先のことまで誰が責任を持てるのかといった意見が聞かれました。
 7/20には全市民を対象に説明会が開催されますが、多くの市民がこのことを知りません。栃木県や茨城県では、候補市町村での国の説明会は開催されておらず、千葉市での説明会が住民承諾のアリバイづくりになる危険性もはらんでいます。                                                         (ちば環境情報センター代表 小西由希子)

 我が家新築ものがたり⑪  ~電力事情~

山武市 中村 真紀 

 山武杉の家に暮らし始め、ちょうど1年になります。暑い夏から薪を燃やしまくった冬を越え、また気持ちの良い初夏になりました。今月は我が家の電力&太陽光発電について、一年弱の表を作ってみました。
 ソーラーの発電量はお日様の気分次第で、月により一万円以上のばらつきがあります。

 

 引っ越し前はだいたい今の2倍のエネルギーを使用し、料金は4000円前後でした。電気炊飯器を止め、冷蔵庫を新型にし(妹夫婦よりお祝いとして!)、クーラーなしの暮らしで、使用量が半減しました。ただ、4.75kWのソーラー発電のために50A契約書なので、基本料金が1,404円と以前の20A546円から858円も高くなってしまいました。いつかはオフグリットして、エネルギー時給の暮らしを実現させたいです。

千葉県にすむ哺乳類6 ニホンザル

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

 時代と人々の思考
 高宕山(富津市)のニホンザル(以下、「サル」)について、「猿害」が騒がれ始めたのは、1970年代であったと思います。
 高宕山のサルが、国の天然記念物に指定されたのは、1956年です。それから、わずか十数年後に、保護すべきサルを「駆除しろ!」と、地元の一部の人々がいいだしたのです。
 このとき、博物館「日本モンキーセンター」(愛知県犬山市)は、浅間山(富津市)の砂利採取現場の写真を展示室に大きく掲げ、「猿害」の原因は、乱開発がサルの棲息地を奪ったことにあるというキャンペーンを行いました。
 サルがいるかぎり、「猿害」は起こります。それへの対処法は、時代によって違います。江戸時代、栗須村(現在の犬山市栗須)の農民は、犬山城に居を構える領主の成瀬氏に対して、「猿害」を理由に年貢の減免を請願しています。当時は、駆除ではなく、被害補償を求めるのが普通でした。

 

 神獣から害獣へ
 日本人は、古代から、サルを厩の守り神として、たいせつにしてきました。
 江戸時代には、庚申信仰(お庚申さま)が全国に広がり、サルはいっそう神聖な動物になりました。庚申信仰の祭神は、帝釈天です。サルは帝釈天の使いを務める神獣とされました。
 柴又帝釈天は、江戸時代の初めに建てられた寺です。成田山新勝寺のような長い歴史のある寺ではありません。それでも大寺院になったのは、江戸の庶民に庚申信仰が根付いたおかげです。
 江戸時代の人々は、帝釈天の使いであるサルに、畏敬の念を抱いていました。
 自然科学の発展は、人々から自然に対する畏れの気持ちを失わせました。資本主義は、人々に利潤追求の妨げになるものを、すべて悪とする気持ちを植えつけました。その結果、サルは害獣に変わりました。
 サルに対する社会的評価の変化は、時代が人々の思考を支配していることを教えてくれます。

 房総のサルの現状
 農作物をサルからまもりながら、サルと共存していくことは、困難ではあっても、やりとげなければならない現代的な課題です。
 高宕山のサルは、天然記念物に指定されたことで保護されています。指定を受けた保護区域をサルが生活するコアエリアとして、そこと人里との間にバッファーゾーン(緩衝地帯)が設けられています。サルがバッファーゾーンを越えて、人里に近づいたときだけ、サルを追い払うことを基本に、猿害対策がとられています。
 しかし、高宕山の保護区以外のサルは、「猿害」を防ぐという理由で、無計画に駆除が行われています。残念なことに、千葉県内では、毎年1,000頭前後のサルが撃ち殺されています。この数は、全国的に見ても、突出しています。アカゲザルとの混血問題もからんで、殺されるサルの数は、減りそうにありません。
 農作物のサルによる被害は、最近は減少しています。しかも、千葉県全域でのサルの個体数調査は、現在、行われていません。サルの個体数調整が必要かどうか、根拠を示さないまま、サルの殺りくが続けられています。

2015年度総会と講演会が行われました

 2015年6月28日(日)NPO法人ちば環境情報センター度総会が、千葉市中央区事務所にて実施されました。
 柳沼薫さんを議長に選出し、正会員38名中、出席者11名,委任状11通(合計22名)で正会員の過半数を超えたことを確認。2014年度活動実績報告,収支予算報告及び監査報告,2015年度活動予定,収支予算が承認されました。会員の方には、関係書類を同封いたしましたので、ご確認ください。
 総会後は、関健志さん(公益財団法人日本生態系協会事務局長)を講師に、生物多様性・地域連携保全活動計画策定に向けての勉強会を実施しました。
 皆さんも今年の活動に是非参加していただき、ご意見いただけますよう、お願いします。(事務局)


           

貝のよもやま話 22 -切手になった貝-

     千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子
  夏のグリーティング切手として52円と82円のシールタイプの切手が発売されました。
今回の切手は南の海の貝でどちらかというと渋い貝です。千葉県の海岸ではあまり拾うことがありません。印刷の都合もあると思うのですが、日本を代表する美しい貝かというとちょっと微妙です。
        
 かつて通常切手に貝が採用されていた時代がありました。そのとき41円切手だったヒオウギ(檜扇)が今回52円切手に採用されています。ホタテガイに似た二枚貝で赤、黄色、紫色、茶色、など様々な色が殻に出ます。もちろん自然の色です。伊勢・志摩では養殖されていて殻をはげしく開け閉めするので「バタバタ貝」と呼ばれています。以前鳥羽に旅行に行ったとき、とんかつ定食を頼んだらバタバタ貝がコンロにのって出てきました。持って帰りたかったのですが、貝殻が焦げてしまって残念でした。味はほぼホタテガイと同じです。
 かつて鳥羽を訪れたエリザベス女王は日本を代表する貝としていろいろな色のヒオウギが贈られたそうです。来年の伊勢志摩サミットのお食事にもきっとヒオウギが出されることでしょう。
 丸くぐるぐると渦を巻いた82円切手のクロスジクルマガイは内房の砂浜で拾える貝です。わたしは生きている貝は研究のために?一応味見をしています。たまたま生きた貝が拾えたので茹でてみました。するとなんともいえない食べたくないようなニオイがしてきました。身を引きだしてみましたがやっぱり食べる気にはなりませんでした。
 「貝」は一時的に「貝毒」を持つこともありますが、貝自体(足)に毒をもつものはいません。魚や植物にくらべてある意味知らない種類でも安全に食べられます。しかし、「まずい」ものもあり、こればかりは本には載っていません。
 殻を捨てたウミウシも貝のなかまですが、これらは外敵から守るために自分の肉をまずくしたといわれています。
 7月25日(土)千葉県立中央博物館で夏休み自由研究相談会が開かれます。夏の研究のヒントや相談にのってもらえます。8月22・23日にはまとめ方や動植物標本の同定をしてもらえます。相談無料ですのでぜひお越しください。
 今年もやります「都川川遊び」7月20日10時 現地集合 (詳細はチラシで)

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2015年8月号(第217号)の発送を 8月7日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

編集後記: 真夏のような5月が終わり、ちょっと涼しかった6月、そして毎日が梅雨空の7月となりました。今年はよく雨が降りますね。生きものにとっては恵みの雨ですが、どうも降りすぎのようです。夏の暑さはこたえますが、ぎらぎらとした太陽の光が懐かしい今日この頃です。 mud-skipper