ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第215号 

2015.6.8 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 想えばかなう
  2. 放射性廃棄物(指定廃棄物)最終処分場に反対するちば市民の会が立ち上がりました
  3.  旅と環境 その15   あらぬ夢想
  4.  千葉県にすむ哺乳類5  イノシシ
  5. 貝のよもやま話 21 田んぼの貝たち

想えばかなう

千葉市緑区 小川 沙弥香  

 みなさま、はじめまして。お久しぶりの方もいらっしゃるかもしれません。CEICの活動から遠ざかって10年ちょっと。先月、千葉市緑区にて小川法務行政書士事務所を開業いたしました。
 行政書士の業務は幅広いことが知られています。私はその中でもISO14001のコンサルティングや、企業への環境に配慮したビジネスを提案している夫とともに、産業廃棄物が法令にのっとり適正に処理されるよう、勉強と実務に励みたいと思っています。
 思えば、小学校高学年の時、美化委員の活動にはまり「燃える美化委員」と勝手にスローガンをつくり、親友と毎日昼休みに広い腐葉土置き場のごみ拾いをしていました。
 お菓子の袋、ジュースの缶・・・。その時に強く心に刻まれた、土にはかえらないものがあるという事実。そしてこのままだと世界はごみで溢れかえってしまのではないかという恐怖。ごみをどうにかしたい、と未熟な心で強く思い、もともと心配性な私はごみのことを考えて寝付けないこともあるほどでした。
 その後、高校では友達と自然愛好会を作り(キャンプに1度行っただけで終わりました。)、大学ではエコロジー文化人類学のゼミに入り、卒業後は仲間とビーチクリーンアップの活動をしていました。いつも中途半端で、何もできない自分だけど大好きな千葉の山や海のごみをなんとかしたい。そんな思いはいつも心にありました。
 ところが結婚し、子どもが産まれてみると子育てのあまりの大変さにごみのことなどすっかり忘れていました。布おむつは早々にあきらめ、紙おむつとビニール袋を日々消費し、一応分別はするものの大量に可燃ごみを出す生活。子どもがあまり丈夫でなかったこともあり、毎日必死で、自分の趣味ややりたいことなど考える余裕はありませんでした。
 そんな中、夫が会社をやめ独立し、お客様に産廃業者さんが増え始め、行政書士の資格があったらもっとお客様のためになるよね、という話になり、じゃあ私がということになりました。気付けば、小学校の腐葉土置き場で必死にごみを拾っていたあの頃から30年近くたち、ただ流れに身を任せてきただけなのに、こうして産業廃棄物という大きなごみと向き合う仕事につくことができました。
 そんな私が今思うこと。それは強く、強く想ったことって、時間はかかるかもしれないけどきっとかなうんじゃないかな、ということ。かなわないこともあるかもしれないけど、きっとその想いはどんな結果になろうと、その結果に影響を与えていると思うのです。
 「想えばかなう」なんて本屋の自己啓発本コーナーに置いてありそうなタイトルですけど、想うだけなんてお金も時間もかからない。だから、強く、強く想ってみませんか。こうありたいと思う自分を。こうなってほしいと思う世界を。
 私は今、強く、強く想います。「ごみ」っていう言葉が消える日が近いうちにくることを。

放射性廃棄物(指定廃棄物)最終処分場に反対する
ちば市民の会が立ち上がりました

ちば環境情報センター代表 小西 由希子  

 指定廃棄物最終処分場に関し、表記の会が立ち上がりましたのでご紹介させていただきます。
 右表は、環境省が示した千葉県の指定廃棄物の量です。現在の保管量は3612tですが、最終的には43%増しの5200tになるというものです。その根拠は、県内保管されている8000Bq/kg以下の農林業系副産物4500tを今後焼却することで8000Bq/kgを超える灰が発生するというものですが、焼却して8000Bq/kgを超えるものを受け入れる焼却場はなく、仮にあったとしても住民が承知するはずはありません。環境省の試算は住民感情を無視したもので、あくまでも机上の試算で現実的でありません。


 東京電力の敷地は火力発電所から出た石炭灰を使って埋め立てた(昭和53年竣工)もので、地盤の強度にも不安があります。さらに千葉県で今後30年間にマグニチュード7以上の地震が起こる確率は70%以上とされ、千葉市中央区蘇我地区は、地下水位1~2m、液状化危険度が高いことが示されています。https://www.pref.chiba.lg.jp/bousai/jishin/higaichousa/documents/05syou.pdf  候補地選定に関わる市町村長会議において、千葉市からは「液状化地域は選定から除外すべき」との意見を2回提出していますが,環境省は技術で対応可能として選定の評価項目に入れていません。

 

 また、自然環境に関しては植生自然度への評価はありますが、海域については何ら配慮がありません。東京湾は里海として私たちに豊かな恵みを与えてくれており、漁業関係者からも市長宛申し入れ書が提出されているようです。
 さらに、候補地は千葉市の鳥コアジサシの繁殖地でもあります。環境省の絶滅危惧Ⅱ類に属し、千葉市でもレッドリストBランクに位置する非常に貴重な動物です。原発事故が起こるまで、東京電力の「ビオトープそが」では市と共同してその保全にも力を入れてきました。
 平成26年3月、環境省自然環境局では「コアジサシ繁殖地の保全・配慮指針(案)」を発表し、国を挙げてその保全に力を入れており、そこには千葉市の取り組みも詳しく掲載されています。一方、指定廃棄物候補地選定のための最終会議第4回市町村長会議はこのすぐ後の平成26年4月17日に開催されておりますが、コアジサシへの配慮は一切行われていないのです。
 候補地選定過程の非公開性や評価項目の不十分さ、液状化等安全への懸念、東京湾への影響など市民の不安は大きく、思いを募らせた仲間が集まり指定廃棄物処分場の受け入れに反対する市民の会が発足しました。ちば環境情報センターも運営委員会で協議した結果、会の賛同人になることを決定し、今回、設立趣意書、賛同のお願い、市長への署名用紙を同封させていただくことにいたしました。じっくり読んでいただき、ぜひご協力をお願いいたします。アピールのための旗の貸し出しも行っていますのでお声かけください。

 旅と環境 その15  あらぬ夢想

千葉市稲毛区 平田 和博 

 十年ほど前オランダを旅した時のことである。チューリップ園など名所を見物しながら、アムステルダムから30㎞ほど北方にある小さな漁港の町フォーレンダムを訪れた。高さ10mほどの堤防が高さマイナス5mの町をアイゼル湖から守っている。このアイゼル湖は淡水湖で揚水した水を一時溜めて、北海が干潮の時海に放流する。堤防の上は、一般道路になっていて、車が往き来していた。その堤防の上に登り、アイゼル湖を眺めながらあらぬ夢想をした。
 東京湾入り口の千葉県富津と横須賀の間を埋め立て、幅10㎞ほどの土地を造成する。そして、そこに東京湾沿岸の港や商工業の機能などを移し新都市を造る。即ち、東京や千葉や横浜などの都市をまとめて移す。内側の東京湾も埋め立てて、穀倉地帯にする。埋め立てには房総の山を削って使えばよい。削った跡地も、農地として利用できる。これまで受けてきた有形無形の東京湾の恵みは得られなくなるが、仕方がない。これは百年の計になるだろう。海面上昇や津波に備えた堤防を造ればよい。東京湾沿岸を個々に工事するより経済的であり、広大な農地の造成により食料自給率が多少上がるだろう。大阪湾や伊勢湾も手掛ければいい。そう、有明海も、だ。
 「おとうさん、これ安かったわ。一本百円よ。それも十本買ったら、一本おまけしてくれたのよ」かみさんが木を削って色付けした質素な木製のチューリップを差し出した。

千葉県にすむ哺乳類5 イノシシ

哺乳類研究者 香取市 濱中 修 

【イノシシって、どんな動物?】
 イノシシは、ウシやシカと同じ偶蹄類です。どちらも、あしに蹄が4つあります。
でも、消化器系に違いがあります。ウシやシカには、反芻胃があります。イノシシには、それがありません。イノシシの消化器は、ヒトによく似ていています。
 イノシシは、食べ物の好みが、ヒトによく似ています。そのため、イノシシは、ヒトの食べ残しで飼うことができます。アジアとヨーロッパのそれぞれの地域で、農耕が始まったころに、イノシシの飼育が始まります。そして、イノシシはブタになりました。
 イノシシの成獣は、ブタに似ていません。でも、イノシシの子どもの“うり坊”は、ブタにそっくりです。子どもの姿のまま、性成熟するように改良されて、イノシシがブタになりました。

 

【千葉県でのイノシシの盛衰】
 数は少なかったようなのですが、終戦直後まで、イノシシは千葉県全域にすんでいました。当時、北総台地は雑木林に被われていました。宅地開発が進み、北総台地から雑木林が消えていくにつれて、イノシシがすむ区域は、房総半島の南のほうに後退していきました。そして、1972年に捕獲されたのを最後に、県内ではイノシシが捕獲されなくなります。
 そのため、千葉県内ではイノシシが絶滅したと考えられるようになりました。ところが、1986年以降イノシシが再び捕獲されるようになります。
私が最初に聞いたイノシシの生息情報は、1991年暮れに行われたシカの有害駆除で、イノシシ3頭が捕獲されたというものです。その場所は鴨川市内ということでした。イノシシは、清澄山系でわずかに生き残っていたようです。
 このころ、何者かが、国内の他の地域で飼われていたイノシシを、千葉県内に放したといううわさが広がります。本当にそういうことがあったのか、確かなことは、今もよくわかりません。
 今のところ、昔から千葉県にすんでいたイノシシの子孫が、再び数を増やしていると考えたほうがよさそうです。
最近では、成田市内などでも、イノシシ被害がでています。イノシシは、再び千葉県全域に分布を拡大しつつあります。

【イノシシ被害はなぜ増える】
 イノシシが猛威をふるっています。千葉県内のイノシシによる農林業被害は、最近十年間で急増し、鳥獣被害の半分以上になりました。イノシシ被害が大きいのは、小湊鐵道、いすみ鉄道の沿線から南の地域です。イノシシ被害が増え続けている主な要因は、2つあります。
 その第一は、過疎化です。房総半島の内陸部に、地図に名前は残っていても、今は誰も住んでいない集落が点在しています。そこに田畑がありますが、通勤農業で、夜は無人になります。このような場所には、休耕地が目立ちます。ヨシなどが繁茂する休耕地は、イノシシの絶好の隠れ場です。イノシシは、昼は休耕地に隠れていて、人間がいなくなる夜に、そこから出撃します。そして、収穫間近の作物を食い荒らします。被害を受けた農家は、作付けをあきらめてしまいますので、休耕地はさらに増えます。その結果、イノシシ被害が、周囲に拡大します。そういう悪循環が起きています。

 

 シカやサルは、電気柵の設置によって、田畑への侵入を防ぐことができます。でも、イノシシは難しい。イノシシは、電気柵の下に穴を掘って、耕 地に侵入します。人間が住んでいなければ、イノシシによる被害を防ぐことができません。
 第二は、狩猟者の減少と高齢化、それに社会の変化にともなう狩猟に対する価値観の変化です。

 狩猟には、免許が必要です。銃を使う場合だけでなく、罠を使う場合にも、免許は必要です。両方を合わせても、免許をもつひとの数は、年々減少しています。特に、銃猟免許をもつハンターは減少し、高齢化しています。
 シカは、銃弾が当たると、すぐに倒れます。イノシシは、銃弾が当たっても、すぐには倒れません。手負いのイノシシが、ハンターに向かって突進してきます。銃を使ったイノシシ猟には、危険がともないます。イノシシ猟は、高齢のハンターには難しいのです。
 狩猟には、野生動物の数を適正に保って、人間と野生動物とが共存できる環境を維持する役割があります。都市生活者が増えるにしたがって、そのような狩猟の役割を理解できない人々が増えています。中には、狩猟を敵視して、これを妨害する目的で、猟区に踏み込む人たちもいます。千葉県内でも、このような人たちとハンターとのトラブルが、各地で起きています。残念なことです。


        

貝のよもやま話 21 田んぼの貝たち

     千葉港ポートパークかもめのクリーン隊 千葉市中央区 谷口 優子
 ちば環境情報センターの美しい谷津田のカレンダーが部屋にかかっています。ふと気づいたのは「貝の写真」がない!「貝」といえば海のイメージですが、谷津田にも実はたくさんの「貝」がいるのです。
 田んぼの中にいるのはおなじみの「タニシ」です。「にし=螺」は巻貝の意味です。田んぼにいるからタニシ。ちなみに海にも殻の口の部分が赤い「アカニシ」という貝がいます。
        
 田んぼではなく流れのある水路にいるのが「カワニナ」です。「にな=蜷、古くはミナ」は小さい巻貝という意味です。海にすむ細長い形をした貝で「ウミニナ」という貝がいます。むかしの人は実によく観察していて、タニシは水量のある水路にはいません。そのほか田んぼには1センチにも満たないモノアラガイがいます。水路にはそっくりな形をした左巻きのサカマキガイという貝もいるのでくらべてみるとおもしろいです。
 サカマキガイはヨーロッパ原産の外来種です。貝の尖ったほうを上にして口が右側にあればモノアラガイ、左側にあればサカマキガイ(逆巻き貝)です。この貝は流れのあるところを好むようです。
 モノアラガイにちなんで古人が味のある歌を詠んでいます。

    物あら貝 読人しらず
    たのもしな物あら貝のつきぬべき法のはちすのうらにすむ身は


なんて強い貝なんだろう。モノアラガイは。蓮の葉の下(=地獄)にすんでいるなんてねえ。モノアラガイ・サカマキガイは水面をさかさまに這って歩くことができます。その様を観察して詠んだ歌のようです。


  <総会のご案内>

 
 日 時 : 6月28日(日)10時~12時
 場 所 : ちば環境情報センター事務所
 内 容 : 2014年度の活動実績報告・会計報告
        2015年度の活動予定・予算などの審議
    総会後、関健志さんの講演会があります。 
 

【発送お手伝いのお願い】

 ニュースレター2015年7月号(第216号)の発送を7月 8日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。

編集後記: 編集後記:6月6日、ミミズ図鑑の著者で日本有数のミミズ研究者である石塚小太郎さんからミミズの生態や採集方法のレクチャーを受けました。生態系で分解者として重要なミミズですが、分類や生態など分からないことばかり。ミミズが表層・上層・下層と種により棲み分けていることや、どの層にいるかで形態も違うことなど、実際に採集しながら教えていただきました。6月13日(土)にミミズの勉強会があります。ぜひご参加ください。 mud-skipper