ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第181号 

2012. 8.6 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 鎌ケ谷 水事情  Ⅰ.地域の特性とグループ活動
  2. 「パートナーシップで公害防止」勉強会
  3. 原発0社会を目指して
  4. 草木染め講座体験記
  5.  千葉県内の活動団体紹介 13

鎌ケ谷 水事情  Ⅰ.地域の特性とグループ活動

鎌ヶ谷市 倉田 智子

 鎌ケ谷市の地域の特性、その一つは複数ある水系である。北総台地の内陸に位置する鎌ケ谷。東西4km,南北6km,面積21km2の小さな市のほぼ中央部に分水界がある(図参照)。因みに隣接する船橋市は、80km2、流下先は東京湾と印旛沼、八千代市は  50km2、ほとんどが印旛沼である。大きな水系が3つ、このことは一番高い所に位置していること、どの水域にも遠いということになる。このような特徴を持つ市に住み、しかも手賀沼は水質汚濁ワーストワンを続けていた。水環境に関心を持つのは当然、むしろ義務ではないかとさえ思った。

   

 グループ「かわ・水・みどり」を結成し、市内の川がどこを始点に、どこまで、どのように流れていくかを、可能な限り歩いて探った。合わせて土地利用の変遷を知るため、明治期の迅速測図を基準として、地図を塗り分けた。
 古い話になるが「ふるさと創生1億円」が、鎌ケ谷市の場合「生涯学習奨励金」として市民に提供されており、これを利用した。1996年のことである。まとめた記録は、「川をたずねて」と題する報告書となり、後日鎌ケ谷市郷土資料館の『鎌ケ谷市史研究第12号』に掲載された。
 都心まで25km圏、交通は3線(東武線・新京成線・北総線)あり、利便性の高い土地のため開発が急で、しかし下水道は敷設の鉄則(下流部から整備される)により未整備、川は生活排水を運んでいた。昔はシジミが取れ、ウナギもいたというのだが、ほとんどの川は生きものを調べる気にもなれない、悪臭に満ち、汚れた流ればかりであった。それでも水が湧き出し、またどこからともなく、しみ出し、川筋を形成していることを自分たちの目で確認した。会の活動は、川をこれ以上汚さないための方策を自ら実践し、提案する活動になっていった。
 「鎌ケ谷の水環境」「水環境を学ぶ手法の研究」も前述の生涯学習奨励制度を使い、グループ学習した。成果は水系ごとの観察会「水辺のウォーキング」や自然に触れる機会を設け、大人もこどもも水に親しむきっかけ作りとなるようにした。水は質的に有限な資源と気付いてほしい。
 手賀沼は北千葉導水事業により汚濁は解消されたが、それでも環境基準値には届かない。第6期(2012年3月策定)湖沼水質保全計画の浄化対策は水生植物による水質浄化、アオコの回収が挙げられている。流域内の上流部まで多自然型川づくりが施されたら、水質は劇的に改善されるかもしれない。
 昨年度「水のはなし・鎌ケ谷の川」を作成した。水の特別な性質の紹介のほか、地球上の水の量や川の定義、そして鎌ケ谷市内の水問題、さらにバーチャルウォーターなどの概念を記した。7月初めに起きた利根川の化学物質流出事故では、鎌ケ谷は断水にならずに済んだ。しかし水道水に付いて、何も記述がないとの意見がきた。読み手は欲張りだなあと感ずるとともに、水に関心を持つ方が増えていることを、頼もしく思った。

「パートナーシップで公害防止」勉強会

アトリエマザリー 千葉市若葉区 土井 麻記子 

 去る7月6日に環境省の新しい指針「新しい地域パートナーシップによる公害防止取り組み指針」を開催しました。今回、企業(環境カウンセラーさんのご出身として)、NPO,議員,行政,国,個人 という立場からのフンジンの取り組みについて自由に語って頂くことができました。指針について講師よりプレゼンをして頂いて皆で基本を勉強をしてから、「その指針を実践の場でどのように目指して行くか。」という話題でフリートーキング。

 

 企業でも、環境の現場とは大変なものです。環境局でも、規制的手法だけで環境を維持するという流れはどうも足りない、との感想を持っておられて、規制プラスαの部分を模索しているとのことでした。それが、規制のあり方を変えるのか、規制以外の機能との連携で実現できるのか、という問い。市長レベルでの意志も関わる大きな枠組みの話しになりますが、今後、具体化していくことで現場の方々の思いも叶っていくのではないかと思います。
 網戸に付着したフンジンの市民モニタリングや、飛散があるという実情の周知を市民レベルで行うことについて、パートナーシップの話題も上がり、具体的に意見交換することができました。具体的な例があがりましたが、基本的にすべてにおいて、指針で目指す姿はあっても、まずは現実をじっくり解析して三者がそれぞれ自立して取り組んでみる事が大切だと思います。それがお互いを助けることとなり、いい連携が生まれてくるのだと思います。
 フリートーキングも盛り上がり、次第にどうしてこの集まりが実現したのかという話題へ移ります。やっぱりキーマンの存在が重要で、その産み出し方や人材育成、組織論、などの話題が上がりました。
 一番は、「相手を批判しない」という姿勢を貫く事で恊働がかなうということに、多くの共感があつまりました。

ということを話し合いました。
 問題によっては、「相手を批判しない」が難しいということもあると思うけれど、捉え方と言い方次第で進む物事は沢山あるはずです。
 さらに話題は尽きず、また、いろんなセクターの方同士ということで異業種間交流が進みまして、フリートーキングは盛り上がり、15時半終了のところ、17時にようやく終了したのでした。

原発0社会を目指して

茂原市 松本 みのり   

 私は、原発の危険性に気づいていながら、福島の事故が起きるまで、自ら原発を止めるための声をきちんと上げてこなかったことを、とても悔やんできました。今はそこから一歩立ち上がり、次の後悔をしないために、自分に出来る小さなことを積み上げていこうと、原発0の社会を作るために、気付いたことから少しずつ行動に移しているところです。
 先日は、友人家族と共に、それぞれ0才と3才の子ども達を連れ、東京の代々木公園での「さようなら原発10万人集会」とデモ行進に参加してきました。真夏の日差しの中、幼い子を連れての参加を心配する声もありましたが、このままずるずると原発の再稼動が続き、それを黙認し続けてしまったら、きっとこの日の強い日差しより、はるかに重い負担を子ども達や、そのまた子ども達に積み残し続けることになると、思い切って出かけてきました。

 

 放射性廃棄物という、未だ人間の手に負い切れていない、危険なゴミの処分を託されてしまうのも、万一の事故で一番被害を受けるのも幼い子ども達です。原発から一日も早く手を引いてもらいたいのは、人生をスタートさせたばかりの子らのはずです。
 政府は、20年後,30年後,その先の責任を持てない人達だけで、原発の再稼動を含むエネルギー政策を決めてしまわず、その頃の主役となる、選挙権すら持たない子ども達にこそ、丁寧なリスク説明を行い、彼らの意思、意見を取り入れ、反映させる責任があると思います。デモ行進では、0才の子のベビーカーの上に「僕が決めるよ」の文字を掲げて歩いてみました。
 実は、デモや署名の数で、今の政府の考え方や判断が大きく変わるとは私も思っていません。かといって、黙って待っているだけでは何も動きません。この日の集会や、毎週金曜夜に官邸前に足を運んでいる人たちは、必ず選挙にも出かけるでしょう。「変わらぬなら、変えてやろう!」という強く熱い意志を、この日集まった多くの人々と、分かち合えた一日となりました。

 

草木染め講座体験記

千葉市稲毛区 吉田 紀恵 

 2012年8月2日、轟公民館で夏休みの子供を対象にした、「やってみよう!くさきぞめ」(主催:千葉市立轟公民館,企画・指導:ちば環境情報センター)に行って来ました。当日は朝からこの夏一番の暑さで、子供たちを集めてのイベントが少し不安になる程でした。
 朝十時に集まった子供は小学2年生から6年生まで20人。ちば環境情報センター代表 小西さんの挨拶、説明に続きまずは屋外へ。全員に水分補給をさせ公民館近くの自然観察をしました。途中野良猫やバッタに気を取られる子あり、じゃれあう子ありで夏休みの子供達は元気いっぱいでした。
 暑い中の自然観察の後は公民館に戻っていよいよ草木染めです。今とってきた雑草を入れて大きな鍋でぐつぐつと20分、綺麗な緑色に染まった染め液と、もう一種類公民館の方が用意してくださった玉ねぎの皮で作った茶色の染め液が出来上がりました。煮出している間に説明を受け、それぞれ自分で好みの柄を考えた子供たちが輪ゴムを使って染め模様を作っていきます。
 女の子は出来上がりを予想しながら丁寧に大小の水玉模様を作ります。男の子は大胆にお団子を作って輪ゴムでぐるぐる巻きに。成功を祈って鍋へポチャリ。その後はもう待ちきれません。20人の子供で熱気溢れる調理室の鍋の前で汗だくになって鍋を覗きこんでいました。
 たっぷり20分煮込んださらしを予め用意されていた明礬入りの焙煎液へ、いざ輪ゴムを外してみるとナントナント美しく染めあがった20枚の布巾が出来ていました。雑草で作った物は黄緑色、玉ねぎの皮は圧巻の茶金色に。当たり前ですが、同じ物など一つもなく皆誇らしげな目で自分の作品を見ていました。
 最後は記念撮影です。自然観察の時はバッタに夢中になっていた子も、この時にはサッと並んで自慢の布巾を掲げてにっこり笑ってくれました。草木染めってもっと渋いシニアの方の楽しみかと勘違いしていましたが、子供にも簡単にすばらしい作品が作れる優れものなのだと実感致しました。そして子供ってやっぱり皆素直で可愛いなぁと思いました。


   

 千葉県内の活動団体紹介 13

-さんむフォレスト-

              
                   さんむフォレスト代表 山武市 稗田 忠弘

 
さんむフォレストは地産地消のすまいづくりをするグループです。1998年に活動を始めて以来、荒れた山武杉の森をすまいづくりと結び付けて再生するという目標は変わりません。山武杉と山武の技能者ですまいをつくるという単純な発想で始めた運動は、多くの経験を経て、資源循環型の持続可能な地域社会をつくる運動へと幅を広げてきました。
 全国的に知られる山武林業ですが、戦中戦後の乱伐と手入れ不足で、森の多くは荒れています。安い外材の輸入のせいで国産材が使われず、森が荒れたといわれますが、私たちは燃料革命こそがより大きな要因だと考えています。
   
 写真:筆者が設計した佐倉市の山下邸外観(左)と室内(右)。山武杉をふんだんに使い、真夏でもエアコンいらずの涼しさだ。

 かつては台地の風除け林であり、下草は関東ローム層の畑の堆肥に、枝打ちされた下枝や枯葉はくらしに欠かせない燃料として、森のすべてがくらしと結びついていました。家庭のエネルギー源が石油やガスの化石燃料になり、森とくらしの関係が切れてしまった結果、経済効果のない森は放置されてしまったのです。
 さんむフォレストの運動は、すまいづくりを核にして森とくらしを再び結びつける、地産地消のすまいづくりと資源循環型のくらし方の提案です。さんむフォレストのつくるすまいにはエアコンがありません。夏は自然の風を通す工夫をして、すまいづくりの残材はすべて、冬の薪ストーブの燃料として利用します。吹き抜けたおおらかなすまいは間仕切りの少ない一体感のある空間が特徴です。風土の恵みに素直なすまいづくりを心掛けていると、自然に古民家の空間に似てきます。
 持続可能なすまいづくりとくらし方の提案は今後さらに重要になると思っています。林業だけを見て再生を試みても、林業が単独で自立することはあり得ません。森が日々のくらしと結びついた資源循環型のくらしの実践が持続可能な地域社会をつくり、結果的に森林をはじめとする地域の自然の再生に結びつくのだと信じて活動を続けています。 

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター 9月号(第182号)の発送を 9月7日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: Yuji工房、渋谷さんのクラフト教室が好評です。独創的なデザインと手の込んだ繊細な仕上げは他に類を見ません。毎月第一土曜日、CEIC事務所での出張教室。森の木,草の実でぜひあなたもオリジナル作品をつくってください。次は9月1日。  mud-skipper