ちば環境情報センター ニュースレター 

ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第176号 

2012. 3.7 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 身の回りの化学物質シリーズ8 -草木染めの化学-
  2. 「黒い粉塵」その後のご報告と、サンプリング調査についてお知らせ
  3. 毎日 平和に暮らしたい 2
  4. 放射線測定してみました
  5.  谷津田米づくり講座2012 参加者募集中! 

身の回りの化学物質シリーズ8 -草木染めの化学-

市原市 南川 忠男 

 初めて草木染めに触れたのは友人がプレゼントがあるというので、友人の電車に合わせるためいつもより30分早い近鉄急行に乗り短大の授業で作ったという草木染めの淡い黄色のてぬぐいを渡された時でした。あれは19歳の時でした。幾何文様が表れておりました。輪ゴムで布を規則的に縛って染まらない箇所にその文様を出すやり方だそうです。
 その次は31年後にちば環境情報センターの草木染めのスタッフとして参加した稲毛区の公民館行事でした。たまねぎや身近な植物が使用され、媒染ということも教わりました。人間の眼は3,000くらいの色を識別できるらしいが、それぞれのグループで同じ草を使っていても仕上がる色具合が微妙に違うし、たまねぎやあかじそはその見た目の色と似た色素で染まるが、桜の枝などは違う色に染まりました。その時、係の方が「採った植物の時期でも色がちがうし、煮出し回数でも、媒染剤でもちがう色相になる」と教えてくれました。その時なぜだろうかと思い、今ようやく調べがつきました。
 草木染めは、植物を煮て色素を抽出し、染めていきますが、木綿や麻などの植物性繊維は、セルロースでできているので染液で染めただけでは安定せず、水に溶かした金属と化学反応させて、固着・発色させます。この工程を、「媒染する」と呼び,羊毛や絹のようにタンパク質でできている動物性繊維はより濃い染まりになります。
 自宅で蓼藍(タデアイ)の種子が入手できましたので、3月にプランターに種植えし、7月に生葉染めを木綿のハンカチにする計画を立てました。自分で育てた染料植物で好みの色に染めるのは道楽みたいです。インジカンという色素が空気酸化でインジゴに変化して鮮やかな水色に染まる予定です。
 藍染は昔から薬効もあり、産着に使われ、あせもを防ぎ、脚絆は毒虫除けにもなっていた。草木染めの材料は薬草としても使われていたが、それは現在25万種知られている植物の二次代謝生成物の合成系の中にフェニルプロパノイド生合成系があり、4500種のフラボノイドと同じ代謝経路で合成される色素物質は植物の成熟度で合成の割合が違い、草の場合、花が咲き始める頃が、木の葉の場合は9月頃が一番染料としての採集によい。これは成熟するまで病原菌との戦いに勝つためフラボノイドの合成割合が多かったが、その後の時期では生合成系の色素物質が優位になったためと思います。カロチノイドはニンジンやトマトの色で黄菊の色でもあり、共存する物質やpHによって色調がかわります。あじさいの鮮やかな赤は酸性土で中性では青色になります。

 

 ちば環境情報センターの緑区の谷津田では古代米の黒米も栽培しており、黒米玄米を一握り白米に混ぜて炊くと鮮やかなピンク飯か赤飯(もち米ではないが)が出来上がります。      
黒米の赤はアントシアニン(赤いバラも)です。箕輪直子さん著「草木染め大全」には3500種の草木染色見本が自らの染めた記録として記載されており、私の自宅の庭のエゴノキやハナミズキも今年は染めに使ってみようと思います。実家の仏壇には法事の時だけ燭台を敷く三角巾のような織物があり、落ち着いた薄茶と山吹色の布に赤や紺の糸で人々の姿が物語のように織り込まれており、室町後期の製造だとわかり、大切に保管しています。450年分の祖先の指紋が付いていたかと思うとタイプスリップしそうで感慨深い。気持ちが落ち着く色あいです、その織物は450年前なので草木染めです。黄色はきはだを椿の灰汁(今の言葉ではアルミ媒染)で染めたのだろうと想像しています。紺はこの頃藍染加温が始まっていたので、1年中染色していたと思います。学生時代の教科書も参考にしました。

 お 知 ら せ

 ちば環境情報センターとアトリエ マザリーが共同提案した「製鉄所の粉塵問題にパートナーシップで取り組む」が、環境省主催「第11回NGO/NPO・企業環境政策提言」において「優秀に準ずる提言」に選ばれました。下記フォーラムで提言をプレゼンいたします。会場での環境省や選考委員との質疑や参加者との意見交換なども聞き逃せません。皆様のご参加をお待ちしています。       
                                                    Atelier Motherly 土井 麻記子
 「第11回NGO/NPO・企業環境政策提言フォーラム」
   ■日 時:平成24年3月21日(水)13:00~16:30 
   ■会場:中央合同庁舎5号館講堂(東京都千代田区霞が関1-2-2 低層棟2階)   
   ■参加費:無料  
   ■主 催:環境省  
   ■参加方法: 3月19日(月)までに申し込みhttp://www.geoc.jp/mail_form/19/

「黒い粉塵」その後のご報告と、
サンプリング調査についてお知らせ
キーワード検索でBlogへアクセス:アトリエマザリー、千葉市の粉じん、てしごとを楽しむ

千葉市若葉区 アトリエマザリー 土井 麻記子 

 昨年の12月、市議会一般質問において市民ネットワークの山田京子市議が黒い粉塵を取り上げてくださいました。ついに、公の場で黒い粉塵が議論されたのです。環境局からの回答では、粉塵の調査・検討、および工場の立ち入り調査が約束されました。環境局規制課では、さっそく春一番が吹く頃から現場で原料ヤードの状況を確認したいとのこと。いよいよですね。
 規制課の動きに感謝しつつ、私もパネル展を一緒に作り上げたメンバーとの継続的な活動を見越して母親のグループ「Atelier Motherly (アトリエマザリー)」を立ち上げました。ちば環境情報センターのバックアップを頂くとともに、市民の視点から、実情を、感じている事を、目に見える形でまとめて、声を集約していくとともに、市・企業とのパートナーシップで粉塵予防生活の提案へ繋げていきたいと思っています。

 製鉄所からの粉塵問題は、大分、倉敷、戸畑や加古川と全国各地に存在しています。しかし、製鉄業界全体を展望したような、経営層がうちたてるような巨視的なビジョンがないと解決へと動いていけないのが粉塵問題です。つまり、粉塵飛散を止めるための様々な手だては、大自然の力にたいしてあまり功を奏さないという、経験的な気付きがすでにあるので、根本的な解決をしないかぎりは収まらないのです。また、千葉市だけの問題でもないように、日本だけの問題でもありません。同じタイプの工場が、中国にも韓国にもインドにもあります。グーグルアース(ネット上の航空写真マップ)で直接見る事ができますのでお勧めです。同じように黒い粉体が野積みされ、風に乗って飛散しているのです(中国宝山製鉄に関しては調査文献があります)。それは、ずっと存在し続けているのです。地球レベルでどれほど飛散しているのか、と考えたくなる事象です。工場の環境管理は世界トップレベルである日本においても、粉塵が野積みされ、市街への飛散に打つ手だてがないという状況です。この問題を解決することの外交的な意義は非常に大きいでしょう。日本では石炭産業は下火の流れですが、埋蔵量の多い国では今後も成長産業ですし、石炭産業の環境改善(グリーン化)も国策として模索されています。

 千葉から出て、ぐるっとアジアを旅した気分になっていただけたでしょうか。さて、ちば環境情報センター&アトリエマザリーでは4月から一年間かけて、千葉市や四街道市の一部をメッシュ状に区切った各ポイントで、粉塵のサンプリング調査(網戸付着粉塵の回収)を始めます。飛散エリアに目星をつけ、シミュレーションとの整合を推察するほか、得られた情報を粉塵予防生活に行かせるようネットや冊子で発信していきたいと思っています。3月より、100名程度の参加者を募集中です。実際にどれくらい飛来してきているのか実感できるチャンスですので、別刷りのサンプリングエリアのリストを見ていただいて、該当エリアにお住まいの方にはぜひ御協力をお願いしたいのでご一報くださいませ。各エリア1名以上の担当で実施したいと思っています。
※調査にご協力いただける方は、折り込みのチラシをご覧ください。

毎日 平和に暮らしたい 2

福島市 阿部 一子 

 近所に住む娘の子どもがA型インフルエンザに感染して、保育園を一週間休みました。去年の十月には肺炎になり、入院もしました。放射線によって細胞が傷つき、免疫力が低下しているのではないかと不安になります。福島で子育てをしている若い人達の不安を思うと胸が痛みます。でもこの地を離れて暮らす人達も、経済的なことだったり、家族がバラバラだったりして、不安な毎日を送っているに違いありません。どちらを選ぶにしても、辛い選択でしかない現実です。
 五十才を過ぎて、細胞分裂の鈍くなった大人にできることは(原発を容認してきた大人がやらなくてはならないことは)生活の場から、放射性物質を移動させることだと思います。どんなことをしても放射性物質は無くならないものだということは、はっきりしています。三十年経ってもセシウム137は半分になるだけです。使用済み核燃料を六ヶ所村へ持って行くのも、高レベル廃棄物を地下処分する計画も、すべて移線でしかありません。
 庭の芝生を剥ぎ取って、隅に穴を掘り埋めておく。やらないよりは、やった方が“マシ”でしょう。泣いて後悔するより笑って後悔するためにも、家のまわり、梨畑の移線に精を出しています。
 きつい、きたない、きけん、最上級三Kの仕事は続きます。マスクにゴーグル、ゴム手袋に手ぬぐいの頬かぶり。ゴム長ぐつに雨ガッパ。見かけなんかど-でもいいのです。ヒバクしないための重装備。夫と二人言葉少なく、黙々と梨の木の粗皮削りをしています。木下にゴザを敷いて、削った皮を集め肥料袋に入れて行きます。一杯になった袋は畑の隅に保管。保管場所は決まっていないので、とりあえずの刈置場。この所雪が多く、放射線は雪で遮へいされているので、空気線量は0.5マイクロシーベルトですが、刈置場は1.6マイクロシーベルトになっています。福島市のゴミ焼却炉にはセシウムを除去するフィルターが取り付けられているそうで、それなら、削った皮をゴミに出してもいいのではないかと思ったりもしますが・・・。とりあえずはガマン。
 粗皮削りをすると、どれ位放射線量が下がるのか、自分の目で確かめたくて、測定器(サーベイメーターラドアイ)を購入しました。一平方メートル当り二万八千ベクレルの樹皮は三分の一の八千ベクレルになっていました。確実に下がっています。高圧洗浄機で洗い流したら、もっと少なくなるはずです。
昨年から、JA新ふくしまの農業経営塾に参加しています。その仲間が集まって、自分達の園地の土には、どれ位の放射性セシウムがあるのか測ってみることにしました。二日かけて、五千ポイント。我家の畑も百ヶ所測りました。放射線量の高い土を剥ぎ取り、集めて菜の花やひまわりを植えてみようということになりました。それを継続的にやって行こうと経営塾の仲間が集まり、二月十五日「ふくしま土壌クラブ」を結成しました。
 家族を避難させ、福島に残って畑の除染をして、いつか家族をよび戻そうとしている人、子どもが再び畑をかけまわれる土に戻したいと若いお父さん。就農を決めた矢先の原発事故で、これ以上の酷さは考えられず、素晴らしい出発点になったと笑顔で話す青年。共に目標は放射能不検出の果物。福島の果実農家の若い人達が、ここで農業を再生させるんだいう熱い思いが伝わって来ます。福島の未来は原発事故の収束にかかっています。余震の多さが気にかかります。

放射線測定してみました

東金市 中村 真紀 

 “通販生活”という雑誌から1週間ほど空間放射線測定器を無料レンタルし、遅ればせながら実際に自分で放射線量を測ってみました。測定したい場所の地上から5㎝、50㎝、1mの所を30秒ずつ3回測定し、その平均値を出しました。東金市の我が家の庭とその周辺は0.06~0.08マイクロシーベルト(μSV)/h、聞いていた通り水の溜まる雨どいの下は少し高くて0.09μSV/hでした。他に匝瑳市の私の実家や茂原・東金市内の知人宅、大網白里町の夫の会社、下大和田のYPP田んぼ周辺も測定してみましたが、どこもほとんど0.1μSV/hでした。下大和田では斜面林の1番下道路脇の落ち葉が溜まっている場所で一時0.13μSV/hでした。

 

 国際放射線防護委員会によると自然放射線以外の被曝の限度は平常時年間1ミリシーベルト(mSV)とされています。昨年4月19日付で暫定1~20mSV/hとしていた文部科学省も福島のお母さん達の猛烈な抗議を受け、8月26日より原則1mSVを目安とすることにしました。それを1時間当たりに計算すると、1mSV÷365日÷24時間=0.114μSV/hとなります。室内の方が放射線量は少なく、又これには食べ物から体内に入る内部被爆は計算されていませんが、ある程度の目安にはできる数字だと思います。この数字と照らし合わせると今回私の測定した場所はどこも一応安心できる値でした。実際に、赤ん坊をおんぶし3歳の娘と一緒に自分達で測定し、この目で確認できたのは良かったと思います。
 が、この問題に関してはこれで終わりではありません。水や食べ物の心配もあるし、いつまた事故や故障が起きるかわかりません。そして何より福島に暮らしている人々、特に子供たちやそのお母さん方、農家さんや漁師さん達のことを思うといたたまれなくなります。同じ時代の親として私も何かできることをしなければいけない。そして同時に幼い2人の娘を守っていくのも私たち親の役目。放射能や原発についてもっと勉強していきたいと強く思っています。

 

 谷津田米づくり講座2012 参加者募集中! 

 種まきからもみすりまで一連の米づくりの作業を体験し、生きものたちを育む谷津田の保全をすすめる仲間を一人でも増やしたいと、米づくり講座を開催します。講座はセンタースタッフが講師となり、これまでの講座経験者も協力します。毎年、子どもたちの参加も多く、にぎやかで楽しい米づくりが体験できます。ぜひご参加ください。
◆日程(予定)全15回(天候や生育具合により変更になる場合があります)
4月7日(土)オリエンテーション・種まき,5月5日(土)田起こし
5月19日(土)田植え,6月16日(土)田の草取り,7月21日(土)畦の草刈り,8月18日(土)カカシづくり,9月15日(土)稲刈り(こしひかり),9月29日(土)脱穀,10月27日(土)稲刈り(古代米),11月10日(土)脱穀(古代米),17日(土)もみすり,12月15日(土)修了式、収穫祭(もちつき)
◆会場:千葉市緑区下大和田谷津田  
◆交通:JR千葉駅10番バス停発 成東または中野操車場行きちばフラワー   バスで45分 片道520円,車の場合は駐車場有り
◆持ち物:長靴、長袖、長ズボン、帽子など
◆1年間の参加費: 大人一人10,000円,子ども2,000円,家族参加一家族15,000円 ※小学生以下は保護者同伴でお願いします。
(講座受講生は当会が開催する講座以外の活動に無料で参加できます)(会員は2,000円引きとなります。)
◆主催:特定非営利活動法人 ちば環境情報センター
 申し込みは、 下記までご連絡ください。
〒260-0013 千葉市中央区中央 3-13-17 
tel/fax:043-223-7807,e-mail: hello@ceic.info
*事前説明会を行います。講座の主旨や注意点などをお話します。
3月24日(土)15時~16時、ちば環境情報センター事務所にて

<会費納入のお願い>

 日頃よりNPO法人 ちば環境情報センターの活動にご理解,ご協力いただきありがとうございます。
 新年度を迎えるにあたり、会費納入の時期を迎えました。
 2012年度会費の納入がお済みでない方は、同封した振り込み用紙の希望会員区分を○印で囲み、会費(正会員5,000円,普通会員2,000円,賛助会員10,000円/1口)をお振り込み下さい。
 宛名タックシールに会費納入状況が記載されていますのでご確認ください(行き違いの際はご容赦ください)。なお、年度については4月から翌年の3月まで、複数年度の納入歓迎いたします。 
 郵便振り込みの場合:郵便振替口座は00130-3-369499  
 銀行振り込みの場合:千葉銀行本店 普通 口座番号3627678,
 口座名義:特定非営利活動法人 ちば環境情報センター 代表 小西由希子

【発送お手伝いのお願い】

ニュースレター4月号(第177号)の発送を 4月 6日(金)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: あれから1年、何かが大きく変わっただろうか。何事も、遅々として進まない。たとえカメの歩みでも、その進む方向が間違っていてはいけないのです。 mud-skipper