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ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第145号 

2009. 8.7 発行    代表:小西 由希子

目   次

  1. 郊外団地を里山に戻す? 「グレーフィールド」という考え方
  2. 船橋市地球温暖化対策地域協議会の設立について
  3. エコドライブ
  4. お魚の話 その3.-マグロ②-

郊外団地を里山に戻す? 
「グレーフィールド」という考え方

 千葉市稲毛区   茂木 俊輔 

 ヒートアイランド対策の観点から、緑と水と風を生かしたまちづくりのあり方を検討する研究会の報告を、書籍としてまとめる仕事に携わりました。そこで、「グレーフィールド」という考え方と出合いました。これは、土地利用の更新が求められている住宅団地や商業施設の跡地のことを意味します。それらの土地利用更新を緑や農の確保に生かすことができないか、という発想です。
 一方で、都市計画の世界では最近、縮小都市計画論というものが意識されるようになってきました。人口減少下の都市計画のあり方を探る議論とも言えます。市街地郊外の自然を食いつぶしながら無秩序に広がってきた土地利用を、今後どのような方向に誘導していくか、というものです。低炭素型社会のあり方とも深く結び付いています。

 市街地郊外で土地利用の更新が求められるような住宅団地や商業施設を、縮小都市計画としてはどのように位置付けて、どのような方向に誘導していくのがいいか――。
 ところで、千葉市の郊外に目を向けてみると、「グレーフィールド」の予備軍とも言えそうな住宅団地が数多く見られます。千葉駅からバス便しかない団地では、世代交代が進まないのでしょう、空き家が散見されます。だれかが所有している不動産なので、開発前の土地利用、例えば里山にそっくり戻すというのは、現実的ではないかもしれませんが、成り行き任せでいいとも思えません。
 これらの住宅団地では高齢化が進んでいるだけに、まずは福祉という形で共同体の支え合いが求められてきます。そこから、まちづくりの芽は育つかもしれません。いずれにしても、主役はあくまで地元で暮らす住民。まちの現況をどのように受け止めて、縮小都市計画論が語られる時代にどのように向き合っていくか、という点が問われるでしょう。
 問いに挑む過程で、緑や農の確保という環境の視点を加えると、地域に内向しかねないまちづくりの話題を、地域の外に開いた都市づくりの議論に発展させていくことができるのではないでしょうか。低炭素型社会づくりに向けて「グレーフィールド」をどのように生かすか、それが、市街地郊外のあり方を考える上で重要な視点になっていく、と考えています。 

船橋市地球温暖化対策地域協議会の設立について

 船橋市地球温暖化対策地域協議会会長 船橋市 青木 清 

 去る3月14日、船橋市は千葉市、袖ヶ浦市に次いで千葉県では3番目に地球温暖化対策地域協議会を設立しました。その経緯と現状などについて概略を紹介します。今後、地域協議会を設立する方々のご参考になれば幸いです。
 地球温暖化対策地域協議会の設立については、地球温暖化対策の推進に関する法律(温暖化対策推進法:温対法)の第26条第1項に以下のようにうたわれています。
 「地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民その他の地球温暖化対策の推進を図るための活動を行う者は、日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等に関し必要となるべき措置について協議するため、地球温暖化対策地域協議会(以下「地域協議会」という。)を組織することができる。」

 船橋市では平成20年3月に船橋市地球温暖化対策地域推進計画を策定しました。この計画では、市の支援を受け、地球温暖化防止活動推進センターからの情報提供、推進員と市民・事業者等の協力のもとで、地域協議会が中核的な役割をもって実行することになっています。しかし、上記の温対法では誰が旗を振って地域協議会を設立するのかについては触れていません。地域協議会は任意団体なので、行政は一構成員ではあっても、市政には組み込まれていませんし、財政的裏づけもありません。にもかかわらず船橋市は積極的に動きました。まず市長名で主要な関係者に地域協議会設立準備会委員の就任依頼をしました。13名の委員と7名の環境保全課員で準備会を結成し、2回の会議を経て、地域協議会の設立総会を開催するに至りました。設立後、市の環境保全課には協議会の事務局を担当していただいています。行政の取り組み姿勢が如何に重要かを示す好例といえます。
 おかげさまで、地域協議会には現在、市民団体(17)、事業者等(19)、学識経験者および行政等(5)、計41の団体及び個人が参加しています。設立の後、役員会を開催して、具体的に活動を進めていくために、次の5つの部会を設置しました。企画部会、啓発部会、広報部会、市民部会、事業者部会です。
 今年度のアクションプランは市の計画に沿った形で、すでに一部は進行していますが、来年度に向けても新鮮なアイデアを取り入れて実効を挙げていくことにしています。
 設立の直後、船橋市はこの地域協議会の設立を全市民に伝えて活動に参加してもらうために、環境新聞「エコふなばし」第2号(発行2009年3月25日)に詳しく紹介しました。そこでは一般的な問題提起をした上で、質問と回答の形式で次のような解説をしています。(Q1)会の目的は何ですか?また、これから何をするのですか?(Q2)入会資格について教えてください。(Q3)会費は集めますか?(Q4)名前が堅苦しいと思うのですが?(Q5)どんなことをしているか、知る方法はありますか?(紙面の都合上、回答は省略させていただきます。)
 今後の協議会の活動は市のホームページや「広報ふなばし」、「協議会ニュース」、「エコふなばし」などで詳しくお伝えすることにしています。
 地球温暖化問題はIPCC第4次報告に明記されているように議論の段階ではなく、今や行動の段階にあります。地域協議会は全市民の意識高揚をはかり、行動を勧めることが出来る、地域に密着した最大の組織です。より多くの自治体が設立されることを期待します。

エコドライブ

    市原市   南川 忠男 

 乗用車は日本全体で7850万台運転されており、1台あたり年間6120㎞の走行で4000万kℓ(8000万トンのCO2)の燃料が消費されています。毎日10万トンタンカー1隻分です。千葉県は人口比率でこの20分の1であると思います。具体的なエコドライブでの方法とメリットは

① 急発進をしない。目安は時速20kmまでを5秒かけるくらいゆっくり加速する。
② 停まる時は早めにアクセルから足を離す。車体の慣性で200mくらいは速度が20%しか落ちない。
③ 速度ムラのある走行をしない。前方の信号が赤になったのに、加速して追い越す方がいますが、駅に着く時刻は変わらない。郊外では6%燃費が低下します。
④ 駅で人を待つ時はエンジンを切る。冷房をいれてのアイドリング1分間で22ccの燃料が消費されます。
⑤ 涼しい時は冷房をいれない。風が嫌いな方はやむを得ないが、エアコンは燃費を12~14%悪くします。
⑥ 重い荷物をトランクにいれたままにしない。100㎏の荷物は燃費を3%低下。スキー用キャリアも風の抵抗で燃費がわるくなるので、面倒でも必要時期だけ設置する。
⑦ 宅配便は時間指定する。4回に3回しか荷物が渡せず、配達連絡票が郵便受けに入れられます。

 市街地走行の38%が発進に使われ、35%が走行時で、15%が信号待ちなどの停止中、8%が減速時に燃料が使われています。自治体や企業で実施されているエコドライブ教室で上記のことを考慮して実際に運転された方々の燃費は教室に来る前の15~20%向上しております。10%燃費が向上すると日本全体で400万kℓもの燃料を消費せずに済み、京都議定書で約束している純努力量0.7%にもなります。最近の新車購入のエコ減税が一時的なものにならないようにしたいです。
 高速道路の千円料金は人々に更に気軽に車移動を促進するので、エネルギー使用の観点からは好ましくありません。渋滞緩和のための中心地のバイパス道路建設などには多額の税金が使用されているのです。自家用乗用車は荷物を持たずに目的地まで移動できる利便性があるが、金がかかると市民に思わせないと都市部の渋滞はひどくなり、更に道路が建設されることになります。やや不便でもひとりくらいエコドライブをしなくてもと思わず、皆で実行すれば国全体で大きなCO2の排出抑制ができます。
 地球温暖化の影響で海面上昇して沈むツバルの住民がオーストラリアに移住する必要がなくなります。この国は堤防を作る資金があるが、国民はエネルギーの使用にあまり気を使っていない。自動車を運転することで環境に負荷をかけております。みなさんも第一約束期間2年目の2009年を機会に燃費を向上させてみませんか?            


お魚の話 その3.-マグロ②-

大網白里町 平沼 勝男 

 最近、養殖マグロというものがスーパーの店先に並ぶようになりました。お寿司屋さんでも盛んに使われています。この養殖という言葉、マグロの場合は厳密に言うと蓄養マグロと表記すべきものです。卵や幼魚から育てるのではなく、すでに大きくなった天然のマグロを捕獲し、生きたままの状態で海の中の生簀に運び入れて一定の期間だけ育て出荷するからです。十分に餌を与えて脂の乗りなどを良くしてから出荷します。しかし日本ではスーパーなどで売るときには、餌を与えた魚はすべて養殖という表記にしなければならないのです。

  この蓄養マグロ、一見効率的にも思えるのですが、実はマグロ資源の枯渇に大きな影響を与えていると言われています。その理由はいくつかのポイントを押さえるとわかりやすくなります。

 ポイントの第1は日本神話。第2にハイテク漁業。第3に資源管理の限界です。この蓄養が盛んなのは地中海沿岸各国とオーストラリアです。地中海一帯で日本が買っているマグロの代表的な国はイタリア、クロアチア、トルコ、スペインなどです。地中海一帯ではクロマグロ、オーストラリアではミナミマグロが蓄養される魚種です。ともに高級マグロです。
 地中海はもともとクロマグロの多い海域です。1960年代よりまき網によるマグロ漁が始まりました。それ以降ハイテク化が進んだことにより漁獲量が増えます。延縄漁も盛んであったため競争原理も働いたと思います。ハイテク化といいましたが、水産業ではそれぞれの国において各国政府が漁業者に対して様々な形の助成金があります。そのおかげで性能のよい新型漁船、ソナーや魚群探知機といった漁業機器、中にはヘリコプターでマグロの群れを追いかけ(今は禁止されています)、また衛星情報のリアルタイムの利用など従来の漁業にはなかった技術が台頭し漁獲技術が格段に進歩したのです。1990年代より、痩せたマグロは出荷せず、しばらく洋上の生簀で肥育させてから日本に出荷することを始めました。蓄養の開始です。これは当初大成功を収めます。同時に日本は脂の乗ったマグロを高値で買ってくれるという日本神話が生まれ、そして蓄養マグロは急激に増えていくことでことになります。結果更なる漁獲圧力をマグロ資源に向けることになったのです。今ではまき網船で漁獲したマグロの大半は生簀に向かうといわれております。

 数年前に日本の食卓からマグロがなくなるのではといったことが報道されるようになりました。ワシントン条約にマグロが取り上げられたのです。クロマグロは20年も生きるそうです。しかも性的に成熟するのは5~8年もかかるといわれています。過度の乱獲には耐久力がないと言われています。マグロ漁をするには各国に漁獲可能量(TAC)が割り当てられます。しかし、蓄養マグロは航海中に生きたままマグロを引き渡すため、実数がわからず管理ができなきなくなっているのです。
 マグロを1キロ太らすのに、餌を10~25キロも与えなければなりません。人口餌料もありますが、タイセイヨウサバ、ニシン、カタクチイワシ、大型のイワシなども大量に使われています。現在、日本市場も大きく変わりました。昨年秋のリーマンショック以降、消費の低迷や食品のデフレがあり、蓄養マグロの集中的な搬入に耐えられない状況となってしまいました。相場が暴落をしているのです。仕入れ価格は昨年同時期の半値くらいになりました。蓄養マグロは今大きな曲がり角を迎えています。

発送お手伝いのお願い

ニュースレター9月号(第146号)の発送を 9月 7日(月)10時から事務所にておこないます。
発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記: 7月22日の皆既日食、たくさんの人が空を見上げましたが、雨や曇り空の所も多く、各地で明暗が分かれたようです。小生は甲斐駒ヶ岳の麓にいましたが、全天厚い雲に覆われて、残念ながら欠けた太陽を観ることはできませんでした。次回の皆既食は26年後の2035年9月2日とか。今度はぜひ観たいものです。 mud-skipper